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ベトさん死去 26歳、枯れ葉剤被害の象徴的存在

2007年10月06日11時06分

 ベトナム戦争中に米軍がまいた枯れ葉剤の影響とみられる結合双生児として生まれたグエン・ベトさんが6日午前1時半(日本時間午前3時半)ごろ、ホーチミン市のツーズー病院で肺炎などのため死去した。26歳だった。松葉づえや義足でボランティア活動に奔走する弟のドクさんとともに、枯れ葉剤被害の象徴的存在だった。2人は88年、同病院で分離手術に成功したが、ベトさんはその後、脳症のために寝たきりとなっていた。

 ツーズー病院のグエン・フォン・タン主治医によると、ベトさんは今年5月下旬に高熱を出し、内腹部から出血。腎臓障害なども併発した。いったんは危機を脱したが、今月になって再び症状が悪化したという。

 ベトさんとドクさんは81年2月、中部高原の村でお互いの下半身の一部がつながった状態で生まれた。88年に日本赤十字社の支援で、当時は「奇跡」といわれた難手術に成功。分離を果たしたが、ベトさんは意識が戻らなかった。言葉を発することもなく、その後の人生を同病院のベッドで過ごした。

 2人を支援する日本人やNGOは多く、ドクさんは治療や講演で多数回来日。昨年12月に結婚し、今年2月には夫婦で来日して長崎などを訪れた。

 ベトナム戦争中、米軍はゲリラの潜むジャングルを消滅させるため、ダイオキシンを含む大量の枯れ葉剤を空中散布した。その結果、現在もベトナム国内で100万人を超える被害者がいるとされる。

 ドクさんは「回復途上だと信じていただけにショックです。こんなに早く亡くなるとは考えたくなかった」と話した。

 支援団体「ベトちゃんドクちゃんの発達を願う会」の河原正実事務局長は「生命の危機だった分離手術から19年。子々孫々にまで災禍を残す近代兵器の恐ろしさを身をもって伝えてくれた。よくがんばったね、お疲れさまと声をかけたい」と話した。

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