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生活保護申請書渡さず 女性、自殺寸前に 北九州市

2007年10月05日10時13分

 生活保護の申請を容易には受け付けない「水際作戦」が批判された北九州市で、3回も福祉事務所を訪れながら申請書すら渡されず、自殺寸前まで追い込まれた女性(47)がいた。3回目は、市が設置した第三者委員会が検証を進め、問題点の指摘を始めた矢先の7月だった。女性の携帯サイトへの書き込みで窮状を知った弁護士らが申請を支援。一命を取り留めた女性は保護を受け、小学3年の次男(9)と暮らしている。

 同市小倉南区に住む女性は05年夏、突然両手の感覚を失い、職をなくした。原因不明で服薬治療を続け、児童扶養手当などで暮らそうとしたが、行き詰まった。家賃や国民健康保険料を滞納し、06年2月に小倉南福祉事務所を訪ねた。

 窓口の職員に長男(23)や親兄弟に援助してもらうよう言われ、面接室に1人残されたという。後に入手した記録には「申請意思なし」に○がついていた。

 家賃滞納のまま食事にも事欠いていた今年3月、次男が41.5度の熱を出した。救急車を呼び、ことなきを得たが、医療費がない。「このままではこの子を殺してしまう」。再び福祉事務所へ行ったが、保険証の発行を受けただけだった。

 近所の住民が食事を分けてくれた。しかし、光熱費の滞納は続き、まずガスが止められた。水風呂に入る日々が続き、電気も水道も停止日の通知が届いていた。狭心症、うつ病の疑いもあった。でも、金がない。

 7月6日、また福祉事務所に足を運んだ。職安に通っていたが、まともに働ける状態ではない。それでも相談は国保の話に終始し、保護の申請書はもらえなかった。「これは死ねってことか」。帰宅後、電気が止められた。

 市内では05、06年に申請書をもらえずに男性が相次いで孤独死した。今年2月に就任した北橋健治市長は保護行政の検証を表明し、5月に第三者委を設置。6月には同委のメンバーが「申請書を渡すべきだった」と指摘していた。 

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