■きょう関係先捜索
「円天」と呼ばれる独自の電子マネーや高利の配当をうたい、健康商品販売業「エル・アンド・ジー(L&G)」=東京都新宿区、波(なみ)和二(かずつぎ)会長=が全国から1000億円超の出資金を集めていた問題で、エル社が設立したNPO法人の顧問に元警視総監が就任していたことが2日、分かった。肩書を利用して会員に安心感を与え、資金を募っていたとみられる。また、エル社が資金繰りに困窮した今年2月以降、元金返済の見通しがないのに、新たな資金集めの手段を考え出していたことも判明した。
警視庁生活経済課は宮城、福島両県警と合同捜査本部を設置。エル社がすでに破綻(はたん)状態にあると断定し、証拠隠滅の恐れもあることから、3日に出資法違反(預かり金の禁止)容疑で本社など関係先約50カ所を数百人態勢で家宅捜索する方針で、大型詐欺事件に発展する可能性も出てきた。
関係者によると、エル社は平成17年6月、内閣府の認証を受けてNPO法人「あかり研究所」を設立。理事には波会長の息子が就任したが、法人顧問として弁護士や評論家とともに、井上幸彦元警視総監(現日本盲導犬協会理事長)が一時期、名を連ねていた。
井上氏によると、18年初めに知人を通じて同法人から、「盲導犬協会の活動に協力する」などと持ちかけられて顧問に就任。井上氏は産経新聞の取材に「地方振興に取り組む団体という説明もあり承知した。(あかり研究所の)実態は知らない」と語った。盲導犬協会への具体的な協力がなかったことから18年末に辞任したが、あかり研究所は就任中、パンフレットに「元警視総監」として井上氏の名前を記載し、会員らに配布していた。
関係者によると、エル社は有名演歌歌手やタレントなどを招いて全国で無料コンサートを開催していたが、こうしたイベントは「あかり研究所」が主催していた。「内閣府認証のNPO法人」「元警視総監の顧問」といった“権威”を利用して安心感を与え、出資を募っていたとみられている。
一方、エル社は資金繰りが悪化して配当の支払いを停止した今年2月以降、「円天共鳴金」という新たな資金集めを始めた。共鳴金は1口100万円で金利は月1%。エル社は集まった共鳴金で「円天市場に出展する商品を仕入れる」と説明していた。
しかし、その後も資金繰りは好転せず、エル社は9月20日付で従業員の大半を解雇。9月末から「出資額に応じて段階的に元金を返還する」と約束したが、現在まで支払われていない。波会長は9月末、上級会員向け通達で「会員に返済する金が思うように集まらなかった」と新たな資金繰りが不調に終わったことを認めた。
「円天」を利用して家電製品などと交換できる東京・銀座の「円天市場」は閉鎖され、会員からの出資金以外に収入がないことなどから、警視庁はエル社がすでに破綻状態にあるとみて、調べを進めている。
【関連記事】
・
L&G本社など捜査始まる
・
「L&G」今週半ばに強制捜査へ 警視庁 出資法違反の疑い
・
L&Gを立ち入り調査 都、副社長も聴取
・
「円天」のL&G、資金行き詰まりか 出資法違反で刑事告訴へ
・
「L&G」5万人から1000億円 仮差し押さえ命令