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  ▼ 記者の視点
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前回改定踏まえてさらなる評価拡大を
臨床検査関連の改定要望
2007.10.3

 次期診療報酬改定に向けた議論が今月以降、本格化していくことになるが、臨床検査領域の学会や団体などからの改定要望がほぼ出そろった。

 要望の内容としては、2006年4月の前回改定を踏まえた改善要望や、不採算項目に関する報酬設定の見直しなどが挙げられている。

◎ 外来迅速加算の充実を―臨床検査医学会

 日本臨床検査医学会(理事長=渡辺清明・国際医療福祉大教授)でも前回改定を踏まえた要望として、外来迅速検体検査加算の算定要件見直しを主要改定要望の1つに位置付けた。前回改定で新設された「外来迅速検体検査加算」は、「患者の視点に基づく評価」を具体化したもの。

 外来患者が受診した当日に行われた「すべての検体検査について、当日中に結果を説明した上で文書により情報を提供し、結果に基づく診療が行われた場合」に限って、検体検査実施料と併せて1項目当たり1点、最大5項目(5点)算定できることになっている。

 ただ、当日行った検査結果すべてについて文書で患者に示すことという条件が付けられており、微生物学的検査など結果が出るまでに時間がかかる検査項目があったり、特殊検査などで外部委託している場合には、算定できない。

 こうしたことから 内科系学会社会保険連合(内保連)を通じて厚生労働省へ出した要望では、同加算の算定要件の改善を要望。「同日中に結果を得ることが不可能な項目や必ずしも迅速に結果を得る必要のない項目を対象からはずし、対象項目を限定する」ことと「1項目あたりの点数を10点に増点」することを求めた。

◎ 管理加算の要件見直し―日臨技

 日本臨床衛生検査技師会(小崎繁昭会長)は、前回改定でも要件の明確化を行った検体検査管理加算に関して、臨床検査技師や学会認定臨床検査専門医の技術評価を診療報酬に反映させることや、同加算の施設要件の見直しを求めるなど、評価項目の改善を求めている。

 検体検査管理加算は、院内で行われる検体検査にかかるコストの評価を主眼とした項目。前回改定では、検査センターによる院内検査の業務受託(ブランチラボ)では、算定できないこととする「院内検査に用いる検査機器及び試薬のすべてが受託業者から提供されていないこと」を要件に盛り込んだ。日臨技ではさらに、要件の明確化を要望、さらに「受託業者」の定義を明確にするよう求めている。

◎実施料への適切なコスト反映 ―日衛協

 医療機関からの検査受託を行っている検査センターで構成する、日本衛生検査所協会(伊達忠一会長)は8月上旬、要望書を厚生労働省に出した。検体検査実施料の適正な設定を求めるとともに、厚労省が検体検査実施料改定の根拠の1つとしている実勢価格調査の開示を盛り込んだ。

 こうした要望を概観すると、前回改定で達成できた項目についてさらなる改善を求めると同時に、コストの適切な反映を要望していることが分かる。臨床検査領域については、改定に当たる論点はそれほど多くはない。

 ただ、臨床検査医学会と日臨技の要望では、臨床検査を専門とする医師と臨床検査技師で組織する団体という特性上、院内で行われる検査に対する評価を求めている。

 学会が、外来迅速検体検査加算の要件改善を求めているのは、検査を受けるためと、検査結果の説明を受ける時間を詰めることで、極力、日を改めた再診を避け、患者が被る経済的、社会的損失を最小限に抑える点や、医療経済的にみても再診にかかる医療費を軽減できるという効果を主眼に挙げる。さらに言えば、外注検査が増えている検体検査に、迅速化という付加価値を付けるとともに、そこに経済的な評価が目に見えるかたちで、上乗せされることへの期待は大きい。

 日臨技でも、検体検査管理加算の算定要件明確化を求めているのは、要望内容は違うが、目的は医療機関の検査技師や設備による「院内検査体制」の評価だ。

 前回改定で明確化した要件をさらに突っ込んだかたちで、より具体化させたいというのはブランチラボやFMSと呼ばれる検査部門の運営に、検査センターが大きく関与するシステムとは一線を画すことで、院内検査体制の優位性を評価してほしいという表れだ。

 こうした要望を次回改定ではどこまで実現できるのか。院内検査に対する評価をどう高めることができるのか。「検査データは単なる数字ではない」というのが、臨床検査に携わっている医療関係者の認識だ。さまざまな現場の努力があってデータを出すことができるというのが、その根拠となっている。前回改定では、臨床検査に対するプラス評価がいくつかなされたが、前回改定で得られた評価をさらに上げていく取り組みが、臨床検査に取り組む関係者に求められている。(下村 浩司)



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