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新日本プロレスが韓国進出、その不安
新日本プロレスが人気低迷打破の活路を求めるべく韓国進出を表明。11月に初興行、年内に韓国支社を設立するという。ただ、決して景気のいい話ではないというのが業界内からの声だ。
「K―1やWWEの人気が同国で高まっているのを受けて“ウチも”となったそうだ。国内での活動に行き詰まったなかで、経費が日本の地方興行と大差なく、現地に有力スポンサーもいるため損はしないということだよ」(興行プロモーター)
これに先立つ5月25日、新日本は韓国AWFに数人の選手を派遣。主催者発表で3800人の大観衆を集め盛況だったことが今回の引き金になったとしている。しかし、実際に観戦した現地記者からは「多く見積もっても400人程度」との報告がある。
「実はこの興行は入場無料。主催者に福祉団体を運営する人物がいて、障害者たちを招待した」(現地記者)
無料でも数百人では、とても高い注目度があったとはいえないだろう。
「歓声が多少あったのも前座の女子プロレスだけ。肝心の新日本の試合は未熟な韓国選手の技の失敗が目立ってシラけていました」(同)
このAWFという団体、興業数も年に4~5回程度で、他に存在する2、3のプロレス団体にしても、年に10回も興行ができれば多い方だというから、韓国プロレス事情は非常に苦しいのが実情といえる。
韓国とのパイプ役になった新日本の星野勘太郎氏は“韓国では前売り券を買う習慣がないから営業が難しい”と話していたが、現地記者は「韓国ではネットの普及で前売り購入は当たり前。実際にWWEでは前売りでチケット完売した。そんな実情すら新日本の関係者が知らないとなると成功はまず無理でしょうね」と苦笑する。
一方、ライバル団体「ハッスル」も韓国進出を模索中だ。関係者によれば「早ければ年内にも具体的な動きができる」というのだ。
「ハッスルは芸能人でもやれるスタイルなので、プロレスの技術がなくても即戦力にできるのが強み。面白いキャラさえいれば韓国興行を成功させられるので人材を物色中です」
極端な話、ヨン様のような韓国の人気者をリングに引き出せれば、確実に話題にはなるだろう。
そうした戦略的な見通しも新日本からは伝わってこない。ハッスルはテレビ東京での定期放送も決まり上昇傾向にあるが、韓国進出という点で見ても、プロレスの本流を守るべき、かつての盟主の前途は暗そうなのだ。
(格闘技ジャーナリスト・片岡亮)(2007.09.11紙面掲載)