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【主張】教科書検定 政治介入排し事実正確に
高校教科書の沖縄戦集団自決に関する記述に付けられた検定の撤回を求める動きが続いている。教科書検定は政治的な動きに左右されてはならない。正確な歴史の記述を求めたい。
教科書検定への批判には、大きな誤解や論点のすり替えがある。
今回の検定前の教科書には「日本軍のくばった手榴弾(しゆりゆうだん)で集団自害と殺しあいをさせ」など、軍の命令で強制されたとする誤った記述があった。
検定意見は近年の研究や証言に基づき軍命令説の誤りを指摘したものだ。前述の記述は検定の結果、教科書会社側が「日本軍のくばった手榴弾で集団自害と殺し合いがおこった」との表現に修正した。
検定は、軍の関与や体験者の証言を否定するものではない。
集団自決は、米軍が沖縄本島西の渡嘉敷島、座間味島などに上陸したときに起き、渡嘉敷島では300人以上が亡くなった。その後の地上戦で12万人を超える沖縄県民が戦死した。この悲劇は決して忘れてはならない。
軍命令説は、昭和25年発刊の沖縄タイムス社の『鉄の暴風』に記され、作家の大江健三郎氏の『沖縄ノート』などに孫引きされた。だが作家の曽野綾子氏が渡嘉敷島で取材した『ある神話の背景』をはじめ、調査や証言で軍命令説は信憑(しんぴよう)性を失っている。
渡嘉敷、座間味での集団自決は両島の守備隊長の命令だったとされてきた。しかし遺族年金受給のために「軍命令だった」と関係者が偽っていたことなどが明らかになった。大江氏の『沖縄ノート』に対して元守備隊長や遺族らが誤った記述で名誉を傷つけられたとして訴訟も起きている。
渡海紀三朗文部科学相は教科書会社から訂正申請があれば書き換えに応じる可能性を示した。検定意見の撤回を求め沖縄県で開かれた大規模集会などを受けたものだ。
しかし、訂正申請は誤記・誤植や統計資料の更新など客観的事実の変更に限られるべきだ。検定の方針が変わることはあってはならない。民主党が検定の撤回や見直しを求めていることは教科書への政治介入である。
教科書には実証に基づいた正確な記述が必要だ。政治的思惑で歴史事実を書き換えることは許されない。