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そんなに単純ですか?市民記者が辞める理由って

編集部員のPOV

平野 日出木(2007-10-03 02:54)
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 木舟周作・市民記者編集委員の記事「市民記者はなぜ辞めてしまうのか」に対し、さまざまなご意見が寄せられました。

 総じて編集部へのご批判であり、その点については真摯に受け止め、改善の実行につなげていきたいと思っています。

 同記事のコメント欄に記しましたように、表記を統一するためのスタイルブックを来週初には、サイト上に公表する予定です。これを参考に書いていただくことで、編集部として表記の観点から手を入れることは、極力減らしたいと考えます。

 編集部の編集を経ることによって、完成記事がオリジナルよりも改悪されるという、編集部として多数あるとは思えないケースについても、これをゼロに近づけるため、1.編集者に対するフィードバックボタンを設置する、2.主編集者名をマイページに報告する──などの措置を中期的に検討したいと思います。

 さらに、市民記者編集委員の方には、3カ月間の任期終了後、編集ツール内に入っていただき、ご自分の投稿については、編集部員に手を触れさせない形で、そのまま完成記事にしていただけるよう便宜を図ることも検討したいと思います。

 上記措置はまだ何ら機関決定しておりません。ですので、公約というより、新聞の見出し的に「△△策を検討」、あるいは「△△を実行へ」ぐらいの“確度”で受け取っていただければ助かります。ただ、編集部への不信感をひとつずつ払拭すべく、具体的に手を打っていきたいと考えております。

 ということで、木舟記事の編集部批判のメッセージはしっかり受け止めます。そのうえで、以下、同記事について、編集部の見解を述べようと思います。

「辞めてしまう」理由が記されていない

 9月22日(土)掲載の木舟記事に対する編集部の反応(というか、私の反応)の一端は、28日(金)深夜に掲載された藤倉善郎記者の記事「『なぜ市民記者は辞めてしまうのか』への異論」内のインタビュー部分でご紹介しました。

 三田典玄編集委員の記事(9月8日掲載)の冒頭に、編集委員の記事に対し、編集部は「コメント欄にて、平日、できる限り返答していく予定です」と約束しました。ところが、ディマンディング(要求レベルの高い)な木舟編集委員は、何度となく、「コメント欄ではなく、記事で反応を」と熱望されます。

 ですから当初は木舟記事に対し、「よっしゃ記事を書いてやるぜ」と思い立ち、そのように編集委員用メーリングリストに書き込みはしましたが、熱くなりやすい私が書くことへの懸念が連休の週末(22-24日)、複数の部員から寄せられました。

 さて、どうしたものかと思案しているところに、週明け25日(火)に藤倉記者がやってきて、「僕、あのデータから全然違ったことを読み取ったので、それ書きますよ」と助け舟を出してくれました。渡りに船だったので、「ぜひ、お願いします」と言いました。

 そして藤倉記者のインタビューに応じると同時に、編集部としてはコメント欄で対応することにしたわけです(記事を書く時間が物理的に取れず、本当に申し訳ありません)。

 藤倉記者の原稿は、26日(水)に私の手元に到着しましたが、27日(木)から28日(金)にかけて、私が福井に出張したため、編集が進みませんでした。木舟編集委員が公開したメーリングリスト上の私の発言(28日)は、あくまで「コメント欄ではなく記事で」と編集部にリクエストされる同編集委員に対し、「私の手元にある藤倉記者の原稿がもう間もなく完成し、掲載されますので少々お待ちください」とお知らせする意味で書いております。

 藤倉記者の記事成立の経緯は以上です。

 ところで、木舟編集委員記事に書かれていることは、全編、編集部へのご批判です。この点については、冒頭に記した通り、真摯に受け止め、改善したいと思っています。ところが、木舟記事中には、その刺激的なタイトルにもかかわらず、どんな人が、どのような理由で辞めていったのかについては、何ら記されていません。

 「辞めたくなる」気持ちは人それぞれです。

 ある人はプロ記者が書くから、といい、別の人は左巻きのオピニオンが気持ち悪いから、また他の人は週刊誌路線が嫌だから、といいます。初代編集長の名前につられて登録したものの、多忙で書かなくなった人、一度記事を書いて、コメント欄で罵倒され書く気が失せた人、コメント欄での反響が大きすぎて怖気づいた人、男性市民記者から馴れ馴れしく「ちゃんづけ」で呼ばれ、引いてしまった女性記者……などなど、さまざまです。

 「同人誌みたいだから、読む気がおきない」「世の中で何が起こっているかよくわからない」「時間が止まったニュースサイト」「全面投書欄の新聞みたい」「コメント欄が気持ち悪い」「言論オ○ニーサイト」と、読者を「辞めてしまった」人の声も編集部には届きます。

 また、過去1年、少なからぬ人材が編集部から離れていきました。その理由もさまざまです。初代編集長とともに去った人、新編集長とソリが合わずに離れた人、市民記者の原稿の編集に時間を注ぐより自分で取材し記事を書くことに意義を見出した人、先行き不安になった人……いろいろです。

 木舟編集委員は直前の8月26日付けの記事、「それでも私がオーマイニュースに期待する理由」のなかで、自分は編集部に不満を感じ、辞める一歩寸前だったと述べています。

 彼のなかでは、「編集部に不満」、だから「辞めたい」という状態だったのでしょう。木舟編集委員としては、「編集部への不満」と、「辞めたい」が直結しています。ですから、「編集部批判」を羅列すれば、「市民記者が辞めてしまう理由」は明らかだと感じられたのでしょうが、編集部としては、本当にそんな単純な話でしょうか? と聞き返したく、十分議論したうえで記事にして欲しかったところです。

数字の使い方がミスリーディングだった

 これも藤倉記者が記事のなかで少し指摘していますが、1カ月間の投稿者110人を母数(登録者数3900人余)とだけ比較し、割ってしまってパーセント表示するのは、ナンセンスです。

 参加の形態は記事執筆だけではありません。コメント欄だけの方もいらっしゃいます。記事についても、投稿意欲は十分あるけれども、現在のような長い記事は書けずに逡巡(しゅんじゅん)している方も相当数いらっしゃるでしょう。それに応えるため、編集部はショートニュース、川柳のコーナーを設けました。

 なんらかの形でサイトに参加している記者数を、たとえばログインしている市民記者数でカウントすれば、7月は450人、8月は351人になります。同じ母数を使っても、稼動は9~12%となり、印象は変わってきます。また、藤倉記者のインタビューで触れたように、韓国オーマイや他サイトとの比較も重要です。編集部員の朴哲鉉によると、韓国では登録記者5万人に対して、常連記者は約500人だそうです。

 藤倉記事と重複しますが、生データの単なる加減乗除だけでなく、それがどういう意味を持つのか、「私はこう見るけど、あなたはどう見ますか?」と取材して、洞察にあふれた、立体的な記事を書いて欲しかったと感じました。

 加えて、「なぜ辞めてしまうのか」という文言は、登録者数が減少しているような印象を与えかねませんが、登録者数は、辞めていく人の減少分を穴埋めして、毎月増加し続けている点についても、ご報告しておきたいと思います(繰り返すまでもないですが、現在の登録者数と、既登録者の稼動状態に満足しているわけではありません)。

 なお、木舟編集委員が藤倉記事コメント欄で記しているように、今回、木舟編集委員からは、投稿時、「念のためですが、多少なり編集を加える際は、事前のご相談をお願いいたします」と注意喚起されました。

 原稿と一緒にこのようなメッセージを受け取ったのは、初めてです。その語調から、編集部は一切の編集を望まれていないと受け止め、表を作成しただけで、見出しを含め文章には触らず、掲載いたしました。

  ◇

 今、私たちは、CGM(消費者生成メディア)で果たしてジャーナリズムを作れるのか、という壮大な実験をしているわけです。なかなか結果が出ない、何かにすぐつながるかと思いきや、どこにもつながらず、先行きに不安を覚えてしまう。この点は、市民記者も、編集部員も同じです。

 編集部員が何か「特別な解」を持っているわけではありません。新聞、テレビ、雑誌などMSM(既存の主流メディア)の経験者だからといって、市民メディアをうまく前進させられるわけでは決してないことは、だれより市民記者のみなさんがご存知のはずです。

 隣国での成功体験だって、政治体制やメディアを取り巻く環境の異なる日本では、お手本になるかどうか全くわかりません。

 だれかや何かのせいにしたり、アレを排除すればいい、コレを付加すれば解決するなどと単純に考えて、声高に何かを批判していい気持ちになってしまうのではなく、興味を持つ大勢の人間がそれぞれのリソースを持ち寄って辛抱強く作り上げていく、そんなシビック・メディアにしていきたいと個人的には思っています。

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