話題

文字サイズ変更
Yahoo!ブックマークに登録 Yahoo!ブックマークに登録
この記事を印刷
印刷

教科書検定:沖縄で29日県民大会 「島ぐるみ」運動に

 太平洋戦争末期の沖縄戦で起きた住民の集団自決を巡り、旧日本軍の強制性を削除するよう求めた文部科学省の教科書検定意見の撤回を求める沖縄県民大会が29日、宜野湾市の海浜公園で開かれる。超党派の大会としては少女暴行事件に抗議し、日米地位協定の見直しを求めた95年以来、数万人が参加する見込みで、政府に対する12年ぶりの「島ぐるみ」の異議申し立てになる。【三森輝久、上野央絵】

 ■世論が後押し■

 3月30日に公表された検定結果に対し、沖縄では5月14日から自治体議会による抗議の意見書が出始め、6月28日には県議会を含む全42議会が意見書を可決した。県PTA連合会などが県民大会開催を模索し始めた7月上旬、「(テーマが)大会になじむのか」と消極的だった仲井真弘多知事も、8月に県議会が参加を決めて開催が現実的になると、参加を表明。世論も後押しした。

 バス会社は95年の大会同様、会場までのバス賃を無料にしたり、県議会など22団体でつくる実行委に開催費として約300万円のカンパが寄せられるなど、大会は官民挙げての準備が進んだ。

 ■注視■

 こうした沖縄の動きを教科書会社や執筆者も注視している。編集者や執筆者でつくる「社会科教科書執筆者懇談会」は25日、東京都内で会合を開き、「日本軍の強制・強要」を明確にするよう各社が文科省に教科書の訂正申請を検討することで一致した。ただ、文科省が訂正に応じるかどうかは霧の中だ。参加者の一人は「ハードルは高いが、県民の声に応えたい。世論が高まれば記述復活も不可能ではないと思う」と話した。

 ■最終手段■

 県民大会は、突きつけられた政治課題に対して県民の多数参加をもって抗議の意思を示す沖縄特有の運動で最終手段とも言える。

 その源流は米軍施政権下にあった50年代の軍用地接収にさかのぼる。統治機関「米国民政府」が54年、接収した軍用地代の一括払いを打ち出し、米下院軍事委員会の調査団も56年、これを認める報告(プライス勧告)を出した。これに対し、住民は「土地を守る4原則」を掲げて各地で集会を開き、同年7月の那覇市の大会には約15万人が結集、一括払いは撤回された。沖縄大学の屋嘉比(やかび)収・准教授(沖縄近現代思想史)は「米軍支配下で、主権のない住民の対抗手段は集会しかなかった」と話す。

 以後、本土復帰を巡る動きや米軍による事件、事故の度に、主に革新政党や労組を中心に同様の大会が開かれてきた。屋嘉比准教授によると、超党派の大規模な県民大会は56、69、95年に続き少なくとも4度目。72年の本土復帰後も県民大会がやまない現状を「復帰で日本の一地方になったにもかかわらず、基地など沖縄問題の構造が基本的に変らず、本土の無理解ゆえに沖縄の声が届かなかった。だから事あるごとに不満のマグマが噴出する」とみる。

毎日新聞 2007年9月28日 2時54分

話題 アーカイブ一覧

ニュースセレクトトップ

エンターテインメントトップ

ライフスタイルトップ

 

おすすめ情報