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  ▼ 記者の視点
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調剤薬局のクライシスマネジメント
求められる危機管理の取り組み
2007.10.1

 従来のリスクマネジメントが調剤過誤などのアクシデントを未然に防ぐための方策を指すことが多いのに対し、ここで取り上げるクライシスマネジメントは発生したアクシデントの影響を最小限に食い止めるための対応策に重きを置く。

 アクシデントは調剤過誤だけではない。強盗や窃盗などの犯罪、地震や台風といった災害なども含まれる。調剤薬局の中にはこうした犯罪や災害に対するクライシスマネジメントに取り組んでいるところがある。

強盗や窃盗といった犯罪に備え

 強盗や不審者の侵入に際しては事前の備えとして、防犯ブザーを設置する薬局が多い。セガミメディクスは調剤を行う全店に防犯ブザーを導入した。ブザーは投薬カウンターの下などのほか、構造上逃げ場がなくなってしまう調剤室の中にも設けた。

 日本調剤は全店に無音の防犯ブザーを設置した。一部の大型な薬局の場合、この設置式のブザーだけでは不十分とみて、持ち歩けるタイプのブザーも取り入れた。

 メディカルファーマシィーは非常ベルが鳴る据え置き式のボタンと携帯できるキーホルダータイプの防犯ベルを採用した。

 これらと連動したビデオカメラを設置している薬局もある。レジスターの引き出しの中にも工夫がある。紙幣を挟む大きなクリップのところには1枚のカードが差し込んであり、このカードを引き抜くと、本社の電話と担当者の携帯が鳴る仕組み。電話に出ると、異常を感知したことを知らせる自動音声が流れるのだ。カードを引き抜いても音はしないため、薬剤師らは犯人に気付かれることなく、外部に事件を知らせることができる。

 クラフトは全店に携帯可能な防犯ブザーを導入したほか、動画を録画できる防犯ビデオも数店舗に設置した。センサーが反応すると、自動的に静止画を撮影する防犯カメラを備えている薬局もある。これはレジや金庫などに近づくと、センサーが反応し、10秒間ほど静止画を連写するもの。窃盗者の逮捕や盗難の未然防止に寄与している。

◎ 地震や台風などの災害にも対処

 調剤薬局は地震や台風、火事といった災害にも対処しなければいけない。アインファーマシーズのある店舗では棚に並ぶ散薬の瓶の前にPPバンド(段ボール箱などを梱包する際によく用いられるポリプロピレン製のバンド)を張っている。これは地震の揺れで瓶が落下しないようにするための措置だ。同社のあるブロックでは「地震発生時対応マニュアル」を自主的に作成した。

 電気や水道などライフラインがとぎれた時のことを想定した事前の準備も必要だ。クオールは一部の店舗に発電機を設置した。レセコンや分包機など主だったものを動かすことができるため、台風や地震などの影響で停電になっても安心だ。セガミメディクスは水剤の調剤が多い薬局に10L入りのポリタンクを常備。断水になっても、ある程度対応できるよう、精製水を入れて保管している。

 調剤過誤、犯罪、災害などはどこの薬局でも起こり得る可能性がある。こうしたアクシデントが発生した場面で円滑に対処するにはそれなりの善後策や事前の準備が必要。にもかかわらず、こうした危機管理に目を向けていない薬局も多い。

 調剤過誤に関してはその発生を未然に防ぐための取り組みには熱心だが、発生した後の対応策については不十分なところが目立つ。対応が後手に回れば回るほど、患者からの信頼も失うことになるため、こうした発生後の対応策もあらかじめ構築しておく必要があるだろう。

 犯罪や災害に対する取り組みに至ってはさらにおろそかだ。直接、収益に結び付くものではないということもあり、非常に無防備な薬局が多い。確かに収益を生み出さず、投資も要するが、無策では犯罪や災害が起きた時の損害も計り知れない。イザという時に慌てふためくことのないよう、これらに関する危機管理についても、今のうちにきちんと考えておきたいところだ。 (星 光洋)



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