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文科省に修正検討指示 「集団自決」削除で官房長官

2007年10月01日21時33分

 沖縄戦で日本軍が住民に「集団自決」を強制したとの記述が教科書検定で削除された問題で、検定意見の撤回を求める沖縄県民の強い意見を受け、教科書会社からの訂正申請などの形で、記述が復活する可能性が出てきた。町村官房長官は1日の記者会見で「沖縄の皆さんの気持ちを何らかの方法で受け止め、修正できるかどうか、関係者の工夫と努力と知恵がありうる」と述べ、「(渡海)文科相にしっかりと検討しなさいと指示した」と語った。渡海文科相も1日、「何ができるのか、何をすべきなのか考えてみたい」と表明した。

 町村長官は「その時々の政治の思惑で教科書の内容が揺れ動くのは、決していいこととは思わない」と指摘する一方、「沖縄の皆さんの気持ち、軍の果たした役割は私なりに理解している。大変な被害を受けた多くの方がいることは深く理解している」と語った。

 文部科学省は06年度の高校の日本史教科書の検定で、沖縄の住民が「集団自決を日本軍に強いられた」などとする表現に修正意見を初めて付け、記述が削除された。

 これに対し、沖縄県内では反発が広がった。9月29日には、検定意見の撤回と記述の回復を求める超党派の県民大会が開かれ、米兵による少女暴行事件のあった95年の大会を大きく上回る11万人が参加した。民主党は検定意見の撤回などを求める決議を参院に提出する構えを見せている。

 これに関連して、福田首相は1日、首相官邸で記者団に「沖縄県民の気持ちも私はわかる。だがそれでどうするかは、検定制度があるから、まずは文科省の方でどうするかだ」と述べ、文科省で対応を検討すべきだとの考えを示した。

 検定意見を撤回した例は過去にあり、文科省はこれも一つの方法として検討を始めている。

 80年度の検定で高校の現代社会の教科書に水俣病の関連で「チッソ」の企業名について記述があったのに対し、文部省(当時)は「特定の営利企業の非難になるおそれがある」と意見を付け、削除された。しかし、これが81年7月に発表された後にマスコミ等で批判を受け、同省は事実上撤回。81年10月から11月にかけて、6社が訂正申請し、承認された。

 文科省は検定済みの教科書について「訂正の必要がある」と認めた時は、教科書会社に対して訂正申請の勧告をすることができるが、この権限は一度も発令されたことがない。

 今回の集団自決をめぐって訂正申請があった場合について渡海文科相は1日、「真摯に対応したい」と述べた。

 《教科書検定》 民間の教科書会社が申請した本を検定基準に基づいて文部科学省が合否判定する仕組み。文科省が検定意見を付した場合、教科書会社は意見に従って修正した本を再度提出して合否判定を受ける。

 沖縄戦に関する記述をめぐっては、82年に検定に通った高校日本史の教科書で、日本軍による住民虐殺の記述が削除されたことが分かり、沖縄から強い抗議の声があがった。当時も県議会は記述の回復を求める意見書を全会一致で可決。その後、復活した経緯がある。

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