2007/09/19 12:05
日本の大手重工メーカーA社が,ある基本的な製造技術を捨てた。コスト削減を目的とするリストラの一環だった。A社にとっては「枯れた技術」であり,もはやその製造技術を使って自社で内製する必要はなく,中国メーカーから安く買えばよいという判断だった。
ところが,この中国メーカーからのOEM調達はうまくいかなかった。その中国メーカーでは品質のバラつきを抑えることができなかったからだ。A社が中国メーカーの現場に入り,何度もしつこく技術やノウハウを教えるのだが,その直後には品質が良くなっても一時的で,すぐにまた下がるという繰り返しだった。得られるはずのコストメリットが,品質の確保で消えていく。
しばらくして,好景気に後押しされてA社にも受注が増えてきた。良い機会だと考えたA社は,中国メーカーからのOEM調達をやめ,再度内製に切り替えることにした。ところが,それができなかった。
A社にとっては目をつぶっていてもできるほどの基本的な製造技術のはずが,わずか5年のブランクがあっただけで,競争力のある製品を造れなくなってしまったというのだ。現在,A社はこの製造技術を再び自分のものとしようと懸命に学んでいる──。
以上はあるコンサルタントに取材した内容だ。日本メーカーの多くが目先の低コストに目を奪われて,簡単に内製技術を捨ててしまう状況を嘆いている。
「今は苦しいかもしれないが,もう少し我慢して耐えろと言いたい。中国の製造業の発展は著しいが,本当にこのまま問題なく発展していくのか。中国の人件費は上がっているし,品質の問題はそこここで出ている。しばらくしたら,また日本メーカーにチャンスがめぐってくる。そのときに技術を捨ててしまっていたら,せっかくのチャンスを逸してしまう」。
このコンサルタントの主張が,すべての業種に当てはまるかどうかは分からない。だが,あまりものコスト重視の流れの中で,実は多くの日本メーカーがA社と同じミスを犯しがちではないかとも思う。杞憂であることを祈りたい。
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売れる製品を売れるタイミングでマーケットに投入する方法とは……。圧倒的な競争力を付ける秘策とは……。21世紀型ものづくりに必須とされるBOM(部品表)の教本
近年,製品事故が相次いだことから,消費者の製品安全に対する意識が高まっています。また,こうした消費者意識の高まりを受けて,製品安全行政も強化される傾向にあります。そのような状況下,実際に製品を開発する技術者には何が求められており,何に取り組むべきなのかを明らかにしていきます。
日時:2007年10月29日(月)
会場:東京コンファレンスセンター 品川
主催:日経ものづくり
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