ここから本文エリア きょういく@東京
地域・家庭で考える「性」2007年09月28日
テレビや雑誌、インターネットなど、子どもたちの周りには興味本位の性情報がはんらんしている。未成年が性犯罪の被害者や加害者になってしまうほか、望まない妊娠や中絶も後を絶たない。特に思春期を迎える子どもたちと「性」について考え、話し合うにはどうしたらいいのか。学校の性教育に任せるだけでなく、地域のボランティアや親たちの会が、様々な取り組みを進めている。(豊吹雪) ◆中学生らに知る機会を 江戸川のNPOが「BOOK CAFE」 子どもからの電話相談「チャイルドライン」を開設している江戸川区のNPO「江戸川子どもおんぶず」は7月に、中学高校生のための「BOOK CAFE」を初めて開いた。 「性」について書かれた本約40冊を分類し、品評してもらうためだ。狙いは「きちんとした性情報にふれる機会を作ること」。大半が子どもにかかわる教育関係者や医師、NPOが監修した書籍で中高生向きだ。 このイベントに参加したのは中学3年生の男女2組と、中学1年生の女の子2人。事務局の青木沙織さんが見守った。 本は「成長・発達」「性的マイノリティー」「性被害・予防」「ジェンダー」「その他」の五つに分けられた。中1の2人は「性被害」を担当。2人の評価が最も高かった本は「デートDV――10代のあなたに贈るDV読本」(福島ドメスティックバイオレンス研究会発行)と、「Say“No!“ “やめて!“といおう」(安藤由紀監修、岩崎書店)だった。 「多様な『性』がわかる本――性同一性障害・ゲイ・レズビアン」(伊藤悟、虎井まさ衛著、高文研)を手にしたのは中3のグループ。本から引用しながら青木さんが身体的特徴が示す性と脳が認識する性、他者との関係の中で求める性、の三つが一致しない人がいることを話した。すると子どもたちは意外なほど自然に「そうなんだ」と受け止めていたという。 電話で寄せられる悩みの上位は、男女とも「性の問題」。だからこそ青木さんは性教育の重要さを痛感している。 同NPO代表の大河内秀人さんは「周囲の大人が性の悩みにきちんと向き合わないから、子どもは商業ベースの情報に飛びつくのではないか」と話す。今後もこのような会を開きながら、子どもたちと一緒に性を考えていく予定だ。 ◆向き合う大切さ伝える 保護者ら集い「学ぶ会」や「授業」 和光高校(町田市)の保護者有志が始めた勉強会「人間の生と性を学ぶ会」の定例会が20日、世田谷区で開かれた。 講師は「『人間と性』教育研究協議会」の村瀬幸浩・前代表幹事。村瀬さんが同校の教員時代から始まったこの会は、もう20年以上続いている。この日は12人の親が出席。思春期の息子を持つ母親の悩みに、会員歴の長い母親が「うちの息子の時は父親が説明したわよ」などと、アドバイスする場面も多かった。 村瀬さんは「性に関することを子どもに聴かれたら、きちんと向き合ってほしい」と言い続けてきた。8月に出版した「性のこと、わが子と話せますか?」(集英社新書)でも、そこを強調している。子どもたちが接する性情報の大半が、性産業発信の「偏った」情報ばかりだからだ。 村瀬さんは大学でも講義を持っている。驚くのは、「レイプもセックスの型の一つだと思っていた」「男の性行動は多少暴力的でもいいと思っていた」と答える男子学生が少なくないことだ。 「ほとんど性教育を受けず、暴力的な性行動を描いたものが多いポルノなどの影響を受けた結果」。そんな状況だから、親の役割は重要だと考える。 長年、都立高校や小学校などで性教育をしてきた産婦人科医の東哲徳さんも、できる限り保護者向けにも「授業」をしてきた。「親も性教育を受ける機会はほとんどなかった。だから『自然とわかる』などと楽観する向きもあるが、それは違う」と言う。 東京産婦人科医会のまとめによると、都内で10代が受けた人工妊娠中絶は2197件(05年度)。うち、中学生にあたる13〜15歳は103人。 「大人がこの現実を直視し、性教育に社会全体で取り組むべきだ」と東さんは話している。 マイタウン東京
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