6月13、14日のFOMC(連邦公開市場委員会)で、FRBは0.25%の利上げを決定した。FRBの政策金利であるFFレートは1.00~1.25%となった。
そして、今回は、これに加え、FRBのバランスシート(マネタリーベース残高)縮小の計画を新たに発表した。
「Addendum to the Policy Normalization Principle and Plans(金融政策正常化の原理とその計画に関する補遺)」によれば、FRBが保有する債券の償還分の再投資を段階的に減少させていくことで(3ヵ月毎に再投資額を減少させていく)、FRBのバランスシートを段階的に縮小させる計画を発表した(詳細はhttps://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20170614c.htmを参照)。
この中で、FRBは景気減速によって、FFレートをそれなりの幅で引き下げなければならない状況下では、再び、償還分の再投資を拡大させることもありうるということに言及している。
そこで、最近の米国経済の状況をみてみよう。
リーマンショック後の回復を牽引してきた自動車販売が5ヵ月連続で前年割れと、すでに減少局面に入っているのに加え、同じく回復を牽引してきた住宅投資にも陰りが見えてきた。ここで、新たな景気の牽引役として設備投資(特にIT投資)が立ち上がりつつあるが、株価動向と実体経済(景気)とのリンケージが強い米国で、ハイテク株の調整が始まった点はネガティブである。すなわち、これが今後のIT投資に負の影響を及ぼす懸念もある。
また、設備投資が立ち上がりつつあった大きな理由は、昨年末以来、(名目)実効為替レートが緩やかなドル安傾向にあり、これによって、ほぼ全地域向けで輸出が拡大し、それが生産拡大、設備稼働率上昇に波及してきた点が指摘される。だが、FRBのバランスシート縮小によってドル高リスクが高まれば、輸出の拡大にも歯止めがかかる可能性もある。
さらにいえば、最近はインフレ率も低下しつつある(特に「ブレークイーブンインフレ率(期待インフレ率)」は大きく低下している)。その意味で、筆者は、現在の米国経済の状況は、FRBがこのまま金融政策の正常化を加速させていくには微妙な段階にきているのではないかと考える。
しかし、イエレン議長をはじめ、FRB高官の多くは、将来の利上げに依然として積極的なスタンスを崩していない。また、FOMC後に発表された最新の経済予測では、FRBの考える長期的な実質GDP成長率が1.8%、完全失業率が4.6%と、足元よりもやや景気のスローダウンを見込んだ数字となっている。