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【社会】統幕長の日米会談記録漏えい 陸自3佐が国賠提訴
安全保障法制に関する自衛隊統合幕僚長と米軍首脳の会談内容が国会で暴露された際、「身に覚えのない内部文書の漏えいを疑われ省内で違法な捜査を受けた」として、防衛省情報本部の三等陸佐大貫修平さん(42)=埼玉県在住=が十七日、国に慰謝料五百万円を求める国家賠償請求訴訟を、さいたま地裁に起こした。 内部文書は、「制服組」トップの河野(かわの)克俊統合幕僚長が二〇一四年の訪米時、「安保法制は一五年夏までに成立する」と米軍首脳に伝えていたとする内容。一五年九月、共産党議員が独自入手したとして国会で追及した。防衛省は文書の存在を認めなかったが、その一方で、存在しないはずの文書の流出元を厳しく調べていた可能性がある。 訴状などによると、大貫さんは暴露された文書と酷似した内部文書を、河野氏の訪米直後に上司からメールで受け取り、通常業務として部内に配信した。その後は各職員が電子データで保管していたが、統合幕僚監部(統幕)は国会で疑惑が浮上した翌日、文書を「秘文書」に指定し、各職員に削除を命じたという。 大貫さんは一五年九月末、陸上自衛隊の内部捜査を行う中央警務隊に呼び出され、文書漏えいを疑われた。自衛隊法違反の容疑で取り調べを受け、うそ発見器にかけられたり自宅や職場を捜索されたりし、一六年二月には「流出した文書を印刷したのはおまえだ」などと追及されたとしている。大貫さんは提訴後にさいたま市内で記者会見し「連日の取り調べで、自白を強要された。身の潔白を証明したい」と話した。 防衛省は十七日、「訴状が届いていないのでコメントは差し控える」とした。 ◆「日報問題と同じ構図」原告側「隠蔽(いんぺい)を図ろうということだと思った」。大貫さんは会見で、存在する文書をあわてて抹消するような指示を受けた時のことを振り返った。原告弁護団の弁護士も「南スーダンPKOの日報問題と同じ構図だ」と、自衛隊の隠蔽体質を批判した。 河野統幕長と米軍首脳の会談文書が国会で暴露されたのは、安保法案の審議が大詰めを迎えていた時期だけに、野党や世論の大きな反発を呼んだ。 訴状によれば、それまで誰もが見られた文書は、河野統幕長が文書の存否を「調査中」と語ったその日に秘密指定になり、二日後には削除が命じられた。文書は存在しないことになったはずだったが、厳しい追及はそれから始まった。おまえが流出させた犯人なのは間違いない−。警務隊は身に覚えのない罪を突きつけてきた。 仕事の面でも、情報本部内でそれまで所属していた高度な情報を扱う部署から、行事資料を作成する閑職へ異動させられた。警務隊からは「共産党関係の資料を出せ」「これは官邸マターだから協力しろ」といった言葉も浴びせられたという。 捜査の結果は今も伝えられていない。「事実上、犯人扱いされて、島流し的な異動もさせられた。国会では『文書はない』としながら、『流出させたのはおまえだろ』と言われ、腹立たしい」と大貫さんは憤りを隠さない。 原告弁護団は「防衛省では国民が知るべき情報が簡単に隠蔽され、違法な手法で犯人捜しが行われている」と批判した。 (西川正志) <統幕長と米軍首脳の内部文書> 共産党の仁比聡平参院議員が2015年9月に国会で、河野克俊統合幕僚長が14年12月に訪米時、安全保障関連法案が15年夏までに成立するとの見通しを米軍首脳に伝えたとする内部文書を公開。野党側は「国会軽視だ」「文民統制に反する」などと反発した。河野氏は「同じ題名の文書は存在した」と認めたが、「同一のものは存在しなかった」と主張。安倍晋三首相も存在を否定した。真相が不明なまま、安保法は15年9月19日に成立した。 PR情報
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