極右政策に反発…「非現実的」伸びず
【ハーグ(オランダ西部)八田浩輔】オランダ下院選(定数150)は15日投開票され、与党の中道右派・自由民主党が33議席を得て第1党の座を維持したが、連立を組む労働党と合わせて過半数を大きく割り込んだ。反イスラムを掲げ、世論調査で一時は首位だった極右・自由党は終盤で失速し、20議席で第2党となった。
欧州では今後、仏大統領選(4、5月)と独総選挙(9月)が控える。今回の下院選は欧州で台頭するポピュリスト政党の動向を占う「リトマス紙」として関心が高まり、投票率は約80%で前回を6ポイント近く上回った。
自由民主党を率いるルッテ首相は、集会で「オランダは今夜、誤ったポピュリズム(大衆迎合主義)にノーを突きつけた」と勝利宣言。しかし現実は連立を共に担う労働党と合わせて議席を半数近く減らす大苦戦だった。労働党は新興政党などに支持が流れ、30議席近くを失う歴史的な大敗となった。
財政規律を重視するルッテ政権の緊縮政策で社会保障費の自己負担が跳ね上がり、中間層以下は不満を抱いている。8議席伸ばした自由党のウィルダース党首は「高齢者に使うべき血税が難民支援に注がれている」と訴え、2015年夏の欧州難民危機を契機に反イスラム層だけでなく現体制からの脱却に期待する一部の左派支持層にも支持を広げた。
しかし政党数が多いオランダでは有権者の受け皿は多様だ。政策論争が深まるにつれ、欧州連合(EU)への拠出金や途上国への支援金カットを原資に社会保障を充実させる自由党のポピュリズム的な提案は「非現実的」とみなされた。ウィルダース氏が党首討論に消極的だったことも終盤で伸び悩んだ要因となった。
今後の連立協議を主導するルッテ氏は、共に19議席を獲得した中道のキリスト教民主勢力、中道左派・民主66を軸に連立協議に入る。主要政党は自由党との連立を拒絶しており、自由党の政権入りの可能性は極めて低い。ウィルダース氏は15日夜(日本時間16日未明)、連立入りへの意欲をにじませ「実現しない場合は(与党の方針に)強硬に反対する」と述べた。
自由党が掲げたEUからの離脱は主要な争点にはならなかった。しかしオランダには一定数の署名を集めれば国民投票を実施できる制度があり、ウィルダース氏は今後もEUに懐疑的な各国の政党と連携しながらEUを揺さぶるとみられる。