トランプ米政権の医療保険改革 「1400万人が保険失う」

  • 2017年03月14日
共和党のポール・ライアン下院議長は、新しい医療保険制度の目的は医療コスト削減だと主張してきた Image copyright AP
Image caption 共和党のポール・ライアン下院議長は、新しい医療保険制度の目的は医療コスト削減だと主張してきた

米議会予算局(CBO)の試算によると、米共和党が提示している新しい医療保険改革案の下では、2018年に推定1400万人がことが明らかになった。CBOは予算や経済の専門家からなる超党派の組織。

CBOはさらに、2026年までに無保険状態の国民は2400万人に達する一方で、連邦政府の財政赤字は今後10年間で3370億ドル(約38兆円)減少すると試算した。

アメリカ健康保険法案(AHCA)と呼ばれる共和党のこの法案については、費用面で懸念を示す保守層もいるだけに、財政赤字の削減につながるという試算結果は、共和党にとって有利に働く可能性もある。

オバマ前政権が導入した医療保険改革(通称・オバマケア)の代替となるこの改革案に、ドナルド・トランプ大統領は支持を表明している。

CBOはさらに両院租税合同委員会と共に、共和党案では低所得者の医療保険「メディケイド」の対象は2018年までに500万人減るものの、2026年までに加入者は1400万人減ると推計されている。

さらに、オバマケアでは2026年の時点で無保険状態の人は2800万人になると試算されていたのに対して、共和党案では2026年までに推定5200万人が医療保険のない状態になるという。

共和党の反応は

共和党幹部のポール・ライアン下院議長は、CBO報告が赤字削減と保険料の引き下げを指摘している部分を強調した上で、「国民が確実に医療保険の対象になるよう、大勢が懸念していることは認識しているしその重要性は受け止めている」と述べた。

「我々の改革案は、国民全員にまったく同じ、高額な保険プランを買わせようというものではない。よりたくさんの選択肢を提供し、各自が希望し払うことのできるプランに加入しやすくするためのものだ」とライアン議長は述べた。

トム・プライス厚生長官は、これほど大勢の人が無保険になるというCBO報告に、政府として「強硬に異論」を唱えると述べ、「現行法では医療保険はあっても、医療を受けられない人が大勢いる」と反論。新しい改革案では、今までより大勢の人が安価な医療を受けられるようになると述べた。

民主党の反応は

一方で民主党は、CBO報告の大勢が無保険状態になるという部分をとらえて、共和党案を重ねて批判。カリフォルニア州選出のアダム・シフ下院議員は、「とんでもない数字だ」とツイートした

「ライアン議長が、オバマケア撤廃法案を大急ぎで成立させた理由がこれで分かった。CBOによると、今後10年で2400万人が保険診療を受けられなくなるという。とんでもないことだ」

バージニア州選出のドン・バイヤー下院議員も、「ひどい事態だ」と批判している。

トランプ政権はなぜ新法案を

大統領選中にトランプ氏は、オバマケアの大半を破棄すると公約していた。

共和党は長らく、オバマケアに強く反対してきた。オバマケアでは事業主の負担が大きすぎて、企業や個人の生活に政府が介入し過ぎるというのが、共和党の従来の主張だった。

アメリカ健康保険法案(AHCA)は医療費削減につながるし、被保険者が減少するという統計は誤解のもとだと共和党は主張している。

これに対して民主党はかねてから、共和党がオバマケアを攻撃するのは、単にオバマ氏と民主党の信用を落としたいからだと非難してきた。

(英語記事 Trump healthcare plan 'will strip insurance from 14 million'

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