「東証2部降格を覚悟している」「上場廃止にならないように努力したい」――東芝の綱川智社長は3月14日、東芝本社ビル(東京・浜松町)でそう話した。上場廃止のリスクがある「特注銘柄」からの解除、17年3月末時点での債務超過回避など、課題は山積みの状況だ。綱川社長は東芝をどう立て直すつもりなのか。
東芝は同日予定していた16年4月〜12月期決算発表を再延期を申請し、関東財務局から承認された。理由は、米子会社Westinghouse Electricで浮上した内部統制のトラブルをめぐり、追加調査が必要と判断したためという。新たな提出期限は4月11日。
財務局が再延期を承認しなければ、東証の基準により上場廃止となる恐れもあっただけに、再延期の承認で首の皮一枚つながった。
だが、上場廃止の危機は、まだ回避できてはいない。
東証は15年9月、不正会計が発覚した東芝を「特設注意市場銘柄」に指定。1年半の間に報告書を提出し、内部管理体制の改善が確認されなければ上場廃止にするとしていた。東芝は16年9月に一度、報告書を提出したが、東証側は「なお確認する必要がある」として指定を継続した。
1年半のリミットが訪れるのは、あす3月15日。東証は14日に東芝株を上場廃止の恐れがある「監理銘柄」に指定し、投資家への注意を促している。
特注銘柄指定の解除のために、東芝は報告書の提出を急ぐ。15日提出予定の報告書には、取締役会強化、開示体制の改善などを挙げるとともに、渦中にあるWestinghouseの位置付け見直しなどを盛り込んだ。「Westinghouseは、マジョリティー(過半数)譲渡を含む非連結化を検討する」(綱川社長)
問題は、上場廃止のリスクだけではない。米原発事業の巨額損失に伴い、東芝は17年3月末時点で債務超過に陥る可能性もある。東証の基準では、決算期末に債務超過となると東証1部から2部に降格。さらに1年間で債務超過を回避できなければ上場廃止になる。
「東証2部降格は覚悟している。その前提の上で、堅実な成長路線に載せたい。厳しいことは理解している」(綱川社長)
東証2部への降格を織り込み済みとした上で、綱川社長は東芝をどう立て直すのか。綱川社長は「社会インフラを核とした事業領域に注力する」と話す。分社化が決まった半導体事業、米原子力事業を除くと、売上高は2019年度に4兆2000億円、営業利益が2100億円となる見通しだ(16年度通期予想は売上高が5兆5200億円、営業赤字が4100億円)。
「半導体事業や原子力事業など売上額が1兆円近い『核となる事業』はないが、2000〜5000億円規模の事業を確実にやり遂げることで再建を進めたい」(綱川社長)。
売却する半導体事業については「入札はオープンなプロセスで行っている。3月末までに入札条件がそろう」。具体的な入札企業の明言は避けたが、技術の外部流出を懸念する声に対しては「半導体は国の安全につながる技術でもあるので、その点も考慮して判断する」と説明した。
「発表した内容の通りに堅実に取り組むことが、過度な成長戦略を求めた過去と決別し、健全な経営体質への第一歩と考えている」(綱川社長)
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