ブランドパーソナリティは 、ブランディングで成果を出すために必要不可欠な要素だ。
適切にブランドパーソナリティを設定し運用すれば、そのブランドに対する生活者の感情移入の度合いは劇的に高まる。結果、愛着感情を生み、指名買いをもたらすパワーブランドになることも夢ではない。
しかし現実を見ると、商品の品質やデザインには力を入れてはいるものの「ブランドパーソナリティ」の重要性を認識していなかったり、あるいは目配りが行き届いておらず、結果、停滞気味なブランドは意外なほど多い。
いくら商品やサービス、あるいはデザインに自信があったとしても、ブランドパーソナリティの本質を理解していなければ、ロングセラーブランドにはなれない。
ブランドパーソナリティは、商品の実体から離れた抽象的な概念であるがゆえに、日々ブランディングを推進する実務担当者の中でも理解しずらく、ついおざなりにされがちだ。
しかし、重要なことなので繰り返す。
ブランドパーソナリティは 、ブランディングで成果を出すために必要不可欠な要素だ。
今回は「ブランディングにパーソナリティが重要な3つの理由」について心理学的に解説する。ぜひこの解説を何度も繰り返し読んでみてほしい。
そうすれば、あなたは「なぜ、ブランディングにおいてブランドパーソナリティが重要なのか?」をロジカルに理解できるようになり、周囲に腹落ちする説明ができるようにもなる。
その結果、指名買いをもたらすロングセラーブランドに向けて、あなたの取り組みに一層の弾みがつくはずだ。
- ブランドパーソナリティの定義とは?
- ブランドパーソナリティの効果-1:豊かなブランド連想を創る効果
- ブランドパーソナリティの効果-2:ブランドに対して感情移入を創る効果
- ブランドパーソナリティの効果-3:ブランドを記憶に残りやすくする効果
- 終わりに
ブランドパーソナリティの定義とは?
そもそも「ブランドパーソナリティ」とは、いったい何だろうか?
ブランド論の教科書には必ずといっていいほど登場する「ブランドパーソナリティ」だが、まずはその定義を見てみよう。ブランド論の大家と言われるアーカー教授の定義は以下の通りだ。
ある所与のブランドから連想される、人間的特性の集合
-デビッド・アーカー
いまいち直感的にわかりづらいが、要は「そのブランド独特の個性を人間の人格に例えたもの」のことだ。
例えば「NIKE」「スターバックス」「iPhone」「ハーレーダビッドソン」などのブランドを思い浮かべると、独特の個性があることに気が付くはずだ。
ブランドパーソナリティとは、いわば「ブランドを人に例えた時、いったいどのような人格を持った人なのか?」の答えといえる。
しかしここで思い浮かぶのは「なぜそもそもブランドにパーソナリティ(人格)が必要なのか?」という素朴な疑問だ。
さらに「ブランドパーソナリティは、具体的にどのようなメカニズムでビジネス成果を生むのか?」までを理解していなければ、ブランドパーソナリティの本質をつかんだとは言えない。
しかしながら、この二つを解説をしている書籍やWEBサイトは驚くほど少ないのが現状だ。
よって、以降からブランドパーソナリティがブランドやビジネスにもたらす効果を解説していこう。
ブランドパーソナリティの効果-1:豊かなブランド連想を創る効果
突然だが、まずは以下の文章をご覧いただこう。ある女性コンサルタントを描写した文章だ。
- 彼女はハーバード大学を卒業後、外資系コンサルティングファームに入社し、20代でプリンシパルに昇進したエリートコンサルタントだ。
- 英語はネイティブ並と思えるほどペラペラだ。
- 29才で独身。端正な顔立ちでモデル風の美人だ。
- 年収は約2,000万円。
- 現在、広尾の3LDKのマンションでひとり暮しをしている。
さて、ここであなたに質問だ。あなたはこの女性コンサルタントに対して、どのような印象を抱いただろうか?恐らくは「ちょっと冷たい印象」や「ちょっと近寄りがたい印象」を持ったのではないだろうか?
続いて、以下の文章を読んでみてほしい。同じ女性コンサルタントに対する文章だ。
- 彼女は純粋で素朴な性格だ。安くておいしいラーメン屋に連れていくと、いつも子供のように無邪気に喜んでくれる。
彼女に対する印象はいかがだろうか?恐らくは、印象が大きくと変わったはずだ。
これをブランディングに当てはめると、最初の5つの文章はブランドの「機能・性能」、そして後半の文章は「ブランドパーソナリティ」に当たる。「機能・性能だけ」を並べた5つの文章に、たった一つの「パーソナリティ」の文章を加えただけで、彼女に対する印象が大きく変わることに気が付いたはずだ。
機能や性能から派生するイメージは、どうしてもライバルブランドも含めて似通ったものになる。しかし「モノ」という実体から離れたブランドパーソナリティは、うまく設定し、活かすことで様々な連想を生み出すことが可能だ。
そしてブランドの「連想」が変われば、そのブランドに対する「評価」が変わる。「評価」が変われば、当然のことながら、ブランドに対する感情移入の度合いや売れ行きも変わることになる。
ブランドは「機能や性能」だけで創られるわけではない。「ブランドパーソナリティ」もまた、うまくマネージすることでブランドに対するポジティブな連想を創り、ブランディングの成果を大きく変えてしまうのだ。
ブランドパーソナリティの効果-2:ブランドに対して感情移入を創る効果
ブランドパーソナリティの心理学的効果の2つ目は、ブランドに対して強い感情移入を創る効果だ。
「人は自分と似た人を好きになる」
このような法則を、あなたは見聞きしたことがないだろうか?これは、アメリカのマーロンという心理学者が調査によって導き出した法則だ。心理学的には「類似性の法則」として知られる。
あなたも、自分と共通する点が多い人に対して「思わず親近感を覚えてしまった」という経験はおありのはずだ。そしてこれは、ブランドと人との関係にも当てはまる。
ブランドパーソナリティによる感情移入の事例:ハーレーダビッドソン
あなたは、ハーレーダビッドソンの聞いて、どのようなブランドパーソナリティを思い浮かべるだろうか?恐らくは「男らしさ」「野性的」「独立心」「自由」などのブランドパーソナリティを思い浮かべるはずだ。
そして「ハーレーダビッドソンの愛好者」のパーソナリティは?と聞いても、同様に「男らしさ」「野性的」「独立心」「自由」などが思い浮かぶだろう。
しかし、冷静になってよく考えてみてほしい。
ハーレーダビッドソンは「物体」としてみれば、排気音がうるさくて燃費の悪く、置場所に困る大型バイクだ。「機能」や「性能」だけを見れば魅力に思えるポイントは少ないが「ブランドパーソナリティ」をうまくマネージすることで、多くの愛好者を惹きつけている。
そしてハーレーダビッドソンとオーナーの間には、深い絆があるといわれる。
ハーレーダビッドソンのオーナーを見ると、体にハーレーダビッドソンのロゴを刺青している人や、ヘルメットにハーレーダビッドソンのステッカーを貼り付けている人も多く見かける。
このようなことが起きる理由は、ハーレーダビッドソンのオーナーとブランドの間に、前述で解説した「類似性の法則」が働いているからだ。
つまり「人は自分と似たブランドを好きになる」という心理メカニズムが働き、ハーレーダビッドソンに対する強い感情移入が創られているのだ。
人は「自分と似た人」に対して「この人は自分と同質の人間だ」という感覚を抱く。また、人は無意識に「自分と似ている人」は自分を肯定的に受け入れ、味方になってくれる可能性が高い人だと感じる。
ブランドパーソナリティは、意図的に定義しマネージしていくことで、ブランドと生活者との間の絆を強めていくことができる。そしていったん絆意識を確立することができれば、以降、そのブランドはライバルと比較されずに、指名で購入してもらえることになるのだ。
ブランドパーソナリティの効果-3:ブランドを記憶に残りやすくする効果
あなたは、以下のような心理学の実験をご存じだろうか?心理学者ハミルトンによる「印象形成実験」だ。
心理学者ハミルトンは、実験対象者を2つのグループに分けた上で15種類の短文を見せた。その短文とは「夕刊を読んだ」「友達が帰ってくる前に部屋の掃除をした」など、ある男性の行動に関する短文だ。
そして、ハミルトンは2つのグループに対して異なった指示を出す。
「15の文章をよく読んで、文章を正確に記憶してください。」
Bグループに対して:
「15の文章をよく読んで、彼の性格や印象について想像してください」
そしてしばらくたった後、2つのグループはハミルトンから「できるだけ多く文章を思い出してください」という指示を受ける。ここで想像してみてほしい。果たしてどちらのグループが、より多く文章を思い出せただろうか?
答えはあなたのご想像通りだ。Bグループの方が、より多くの文章を思い出せたのだ。
それではなぜ、このようなことが起きたのだろうか?
ハミルトンの実験で「文章を正確に記憶してください」といわれたAグループは、呈示された一つひとつの文章を、それぞれバラバラに記憶していた。
一方の「性格や印象について想像してください」といわれたBグループは「夕刊を読んでいる」「部屋を掃除している」などさまざまな情報から、
- 夕刊を読んだり部屋を掃除したりする人はどういう人なのかを考え、
- 「この人は几帳面な人に違いない」などといった「印象」を形成した
その結果、呈示された15の短文を「意味的に関連づけて」記憶していた。そして次に「文章を思い出す」際には、
- 文章をバラバラに記憶したAグループは、バラバラに記憶した文章を、一つひとつバラバラに思い出さなければいけなかったのに対し、
- 「印象形成」のプロセスを踏んだBグループは、男性の性格や印象を手がかりとして、そこから芋づる式に記憶をたぐることによって他の文章も簡単に思い出すことができた
というメカニズムが働いたのだ。この実験結果をまとめると、以下のようになる。
人が物事を記憶するときには「対象物」に関する多くの情報を意味的に関連づけて「ひとつの概念」にまとめ上げ、その「ひとつの概念」を記憶し続けるほうが、結果的にバラバラに記憶するより「効率的に」「より多くのことを」記憶することができる。
これを「ブランド」にあてはめてみると、以下のようになる。
生活者がブランドを記憶するとき「機能・性能」などに関する多くの情報を意味的に関連づけて「パーソナリティ」にまとめ上げ、その「パーソナリティ」を記憶し続けるほうが、結果的にバラバラに(機能・性能を)記憶するより「効率的に」「より多くの(機能・性能を)」記憶することができる。
「なんとかしてブランドの知名度を上げることはできないか?」と日々悩むマーケティング担当者は非常に多い。もしかしたら、あなたもその一人かもしれない。
しかし周囲を見渡すと、ただひたすらブランド名を大きく表示した広告や、声高に連呼するだけで終わる広告は後をたたない。しかし上記のハミルトンの実験を見れば「ただひたすら暗記させようとする」というアプローチは、実は効率が良くないことに気が付くはずだ。
ぜひ、ブランドパーソナリティをうまくマネージしよう。そうすれば、ブランドの記憶効率は劇的に高まり、あなたのブランドの大きな味方になってくれるはずだ。
終わりに
今回は「ブランドパーソナリティとは?ブランドに個性が必要な3つの理由」について解説した。
冒頭で解説した通り、ブランドパーソナリティは高度に抽象的な概念であることから、日々ブランディングを推進する実務者の中でもなかなか理解しずらく、ついおざなりにしがちだ。
しかし、ブランドパーソナリティは 、ブランディングで成果を出すために必要不可欠な要素だ。
ぜひ、何度もこの記事を読み返して「ブランドパーソナリティを、ブランディングやビジネス成果に直結させるためのロジック」を頭に入れて、周囲にも説明できるようになってほしい。
最後に、参考までにジェニファー・アーカーによる「ブランドパーソナリティ因子」を紹介しておこう。
これは、アメリカの60の有名ブランドに関し、1,000人以上に調査した中から得られた5つのブランドパーソナリティ因子(Big5と呼ばれる)だ。
必ずしも日本に当てはまるとは限らないが、参考にはなるはずだ。
- 誠実因子:
■堅実:家族志向/田舎/平凡/ブルーカラー/典型的なアメリカ人
■正直:誠実さ/偽りのなさ/道徳的/思慮深さ/気づかい
■健全:本物/正統/永遠の若さ/伝統/昔ながらの
■励まし:情の深さ/親しみ/人間的な温かさ/幸せ - 刺激因子:
■憧れ:流行/刺激的/自由/華やかさ/挑発的
■勇気:冷静さ/若さ/快活/外向的/冒険
■想像力:ユニークさ/ユーモア/驚き/芸術的/楽しさ
■斬新性:独自性/現代的/革新的/攻撃的 - 能力因子:
■信頼:勤勉さ/安全/有能/信用できる
■知性:技量/結集力/まじめさ
■成功:リーダー/自信/影響の大きさ - 洗練因子:
■上流階級:魅惑的/器量の良さ/思わせぶり/洗練された
■魅力:女性らしさ/心地よさ/性的魅力/優しさ - 素朴因子:
■アウトドア:男らしさ/西部開拓時代/活動的/スポーツ
■頑強さ:飾りのなさ/強さ/無駄のなさ
ぜひ、今回の解説があなたのチームのブランディング実務において、有益な示唆となれば幸いだ。
今後も、折に触れて「ロジカルで、かつ、直感的にわかるブランディングの解説」を続けていくつもりだ。( 過去記事と今後の掲載予定はこちら )
しかし、多忙につき、このブログは不定期の更新となる。
それでも、このブログに主旨に共感し、何かしらのヒントを得たいと思ってもらえるなら、ぜひこのブログに読者登録やTwitter、Facebook登録をしてほしい。
k_birdがブログを更新した際には、あなたに通知が届くはずだ。