手に持った「3D触力覚VRコントローラー」を動かして、画面上の敵を倒す。剣で切った“手応え”を感じることができる=2017年2月22日、相良美成撮影
ミライセンスの「3D触力覚VRコントローラー」=2017年2月22日、相良美成撮影
茨城県つくば市のベンチャー企業「ミライセンス」は1日(日本時間2日)、米国サンフランシスコで開かれたゲーム開発者会議「GDC2017」で、左右に引っ張られる感覚や、剣で敵を切った際の“手応え”などをバーチャルリアリティー(VR=仮想現実)技術で感じることができる「3D(三次元)触力覚VRコントローラー」を発表した。3D触力覚は、実物がなくても実際にものに触った感覚を味わえるように脳を錯覚させる技術で、同社はゲーム機のほか、自動車の「次世代コックピットシステム」のパネル操作、医療手術の遠隔操作など、幅広い分野での実用化を進めている。
この技術は、国立研究開発法人「産業技術総合研究所」(産総研、つくば市)の主任研究員を務める同社の中村則雄・最高技術責任者(CTO)が開発した。指先で触ったり装着したりした機器から振動などの刺激を与え、その波形パターンを変えることで脳が錯覚する。押したり引いたりという「力覚」と、硬い・軟らかいなどの「圧覚」、つるつる・ザラザラといった「触覚」を同時に再現する。
同社の香田夏雄社長は「色の三原色のように、力覚・圧覚・触覚は『三原触』と言えるもので、三つを組み合わせることであらゆる感触を表現できる」と語る。
GDCで展示したデモンストレーションでは、コントローラーを握った際の指先から感じる微少な振動により、射撃で的を撃った時の反動や、素材による肌触りの違い、ものをつぶす時の抵抗感などさまざまな感覚を、画面を見ながら体験できるようにした。
ゲーム機以外でも、利用の可能性は多岐にわたる。無人の建設機械や医療機器の遠隔操作は、触った感覚がわかれば、より安全に行うことができる。自動車に搭載されたタッチパネルを操作するのであれば、エアコンの温度設定など、パネルを見ずに指先の感覚でどれだけ設定温度を変えたか分かる。スマートフォンの画面でボタンを押す時も、「押し込んだ」という確かな感覚を得ることが可能だ。既に国内外の企業とパートナーを組んで、これらの分野での商品開発を進めているという。
中村CTOは「『3D触力覚』で取得した特許の波形パターンを用いない限り、リアルな触力覚は得られない」と話し、技術の普及に自信を示す。市場の拡大をにらみ同社は、4月にサンフランシスコにサテライトオフィスを開設する予定で、シンガポールや欧州にも拠点を設ける方向で検討している。【相良美成】