北朝鮮の新型弾道ミサイル発射を報じるテレビニュースを見る人々=ソウル市内の駅で12日、ロイター
【ソウル米村耕一】北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)技術を適用した固体燃料式の新型中距離弾道ミサイルの発射に一定の成功を収めたとみられることで、韓国軍は北朝鮮のミサイル攻撃に対応する戦略の変更を迫られる可能性が出ている。また、韓国政府が在韓米軍への配備方針を決めた「終末高高度防衛(THAAD)ミサイル」についても、より必要性が高まったと見られている。
北朝鮮の国営メディアは13日、弾道ミサイル発射について報じ、実験当時の映像も公開した。こうした報道によると、今回の新型ミサイル発射実験の技術的なポイントは▽固体燃料を使用したエンジンの使用▽「コールドローンチ」方式による発射の信頼性と安定性の確認--などだ。
固体燃料を使ったミサイルは、液体燃料を使っていた中距離弾道ミサイル「ムスダン」などに比べ、移動や発射準備が容易になる。また、「コールドローンチ」方式はガスの圧力などによってミサイルを撃ち出した後に空中で点火するため、発射管のすみやかな再利用を可能にする。
韓国軍は従来、ミサイル攻撃の兆候を事前につかんで北朝鮮のミサイル関連施設などを先制攻撃する仕組み「キルチェーン」や、韓国独自のミサイル防衛システム(KAMD)の構築計画を進めていた。しかし、新型ミサイルで移動や迅速な発射が可能になれば、事前探知による先制攻撃は難しくなる。
ミサイル防衛などに詳しい韓東大学の朴元坤(パクウォンゴン)教授は「ミサイル発射の探知識別が極めて難しくなるため、今後はキルチェーンよりもミサイル防衛に重点を置くほかない。その場合も今進めている独自開発の迎撃ミサイルでは時間的に間に合わない」と指摘する。今回の新型ミサイルは最高高度550キロ、速度はマッハ10だったとされるため、40~150キロの高高度で迎撃するTHAADの重要性がより高まるという。