でも、『関ジャム』や『ミュージックステーション』のテレ朝とか、すごい時間帯に『クイズ☆スター名鑑』をぶっ込んでくるTBSとか、すごくいい方向に進んでいると思うんですよ。そんな編成、普通考えないじゃないですか。『クレイジージャーニー』の内容だったりとか、トップがそういう尖ったものを「行け!」と言う人らしいので、BPOとかクレームとかに一喜一憂しない体力作りができつつあるんじゃないかって思います。
このヒャダインのインタビューに関して語りたいことが山ほどあるが、それはともかくここでヒャダインが「テレビがいい方向に進んでいる」番組として挙げている『関ジャム 完全燃SHOW』
日曜深夜放送中。
毎週録画して消さずに残しているくらい好きなのだが、この番組、考察してみるととても面白い作り方をしているのがわかる。
面白さについて以下、少し考えてみる。
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丁寧
2/12放送分【谷村新司に心に響く曲の作り方を学ぶ!】から。
谷村氏が曲作りの極意を3つ挙げ、その中のひとつとして「目線の使い分け」を解説する。
歌詞の目線は、
A.主人公が私の物語
B.主人子が相手の物語
C.第三者から見た物語
D.空(俯瞰)から見た物語
だと分類。
そしてそれぞれの目線について一つづつ解説する。
歌詞を書くときはまずAの自分目線で書き、その中で相手が出てきてBになる。
ここでラブソングができると説明。
ここからVTRとナレーション。
Aの曲として槇原敬之「どんなときも」のVTRを流しながら歌詞の中の「僕」という人称をクローズアップ。
次にBの解説。ここではスキマスイッチ「奏」のVTRが流れ、歌詞の「君」「僕」「ぼくら」がクローズアップされる。
ここでスタジオに戻り、Cの第三者視点の解説を開始する谷村氏。
二人だけの視点に風景(場所)が入ることで途端に奥行きが生まれるのだと言う。
そしてD、俯瞰目線で広がりが出るということを挙げ、中島みゆきの「時代」や谷村新司「昴」を挙げる。
スケール感が広がることで君と僕から普遍的なテーマへと移行。その視点移動を繰り返すことで歌詞に広がりと奥行きを持たせる。
スタジオでゲストによる概要解説→VTRでさらに噛み砕いた解説→具体的なVTRとテロップ、ナレーションでさらにわかりやすく
ここまで徹底して噛み砕くからとてもわかり易い。
少し難しい所があればすぐに戻ってナレーションベースでもう一度解説し直す。
これがCATVであればスタジオの解説の横にワイプで流したりして済ますところを、あえてVTRを流す前にVTRで再度解説したり、あるいはVTRをスタジオの関ジャニと一緒に見たりすることで解説の詳しさを増すことができる。
こういう贅沢な時間の使い方を最近の番組ではあまりやらない。
もし情報の難度が高いなら、その分情報をイージーにしてさらに詰め込むのが常套手段。
この番組ではそれをやらない。
難しいところがあっても薄めず、それをあえて説明する方を選ぶ。
音楽は詳しい人には当たり前でも知らない人には新鮮な知識も多い。
だがそういった知識は初見の人には受け入れづらかったりもする。
だからこそのテレビ向けの詳細説明だといえるが、この丁寧さはなかなか真似出来ない。
マニア向け
1/15放送分【売れっ子音楽Pが選ぶ2016年ベスト10~トップ3発表】
この回では2週に渡り、tofubeats、蔦谷好位置、いしわたり淳治(ex.SURPERCAR)の三人のプロデューサーがそれぞれの2016年ベスト曲を発表するという内容。
まず蔦谷好位置のランキング4~10が、
10.はきだめの愛/T字路s
9.LOSER/米津玄師
8.C'estLVie feat 七尾旅人/Kan Sano
7.InMyFace/SALU
6.NoProblem/ChanceTheRapper
5.majorityblues/チャットモンチー
4.リッケンバッカー/リーガルリリー
完全趣味なラインナップ。
音楽好きのブロガーやミュージック・マガジン、テレビブロスの音楽コーナーなら、こんなラインナップもなるほどといった感じだがこれを日曜の地上波のテレビでやるあたり、一切日和ってない。
10位にいきなりブルージーなT字路sを挙げてくる辺り本気度が高い。
素晴らしい。
こんな本気で趣味の……テレビ向けに媚びてないラインナップを出してくるのもこの番組の魅力。
わからない洋楽ミュージシャンの名前があってももちろんわかりやすく解説。
「なぜこれが選ばれたのか?」も微に入り細に入り解説する。
そういう中で出てきたのが「ピコ太郎のPPAPのカウベルはTR-303の音源」と言う話。
togetter.com
808のカウベルw pic.twitter.com/OEdqysAEJI
— リトマネン・スケベッチ・オナゴスキー (@ero_litmanen) 2017年1月15日
そしてハズさずピコ太郎を1位にするトーフ氏。
— にゅ|௰・ ) (@camelmenthol) 2017年1月15日
「DJ諸氏はこれを聴いて『コイツやばいヤツだ』『この人は確実にテクノが好きだ』と思ったはずです!」
「“カウベル政治”ですよ!」
ちゃんと笑いもとっててさすがです。
アフリカ・バンバータやトゥー・ショートのTR808を使った音源を紹介し、さらに古坂大魔王が登場
「TR-808のカウベルのだけだとアタックが弱いので、TR-909のスネアを裏で合わせてる」
と追加説明。
当然、ネットのDJ&DTMクラスタが沸き立つ。
m.youtube.com
言われてから聞くと……確かに裏の位置にスネアがいるw
こういうマニアにしかわからないこだわりの内容を、それでもわからない視聴者に向けてわかりやすく解説しようとする。
この硬軟織り交ぜた姿勢もこの番組がウケている理由のひとつ。
バラエティ&ジャムセッション
11/13放送分【注目ラップの世界を解剖】
R指定vsDOTAMAによるFSDでのフリースタイルのパンチラインやフローの解説などがあって、ラッパーあるあるとして、一緒にメシを食いに行くとつい韻を踏もうとしてみんな黙ってしまう「ラッパーズサイレンス」で笑いを取ったり。
キチンと笑えるバラエティとして成立している。
こういうフットワークの軽さも関ジャニならでは。
最後にはジャムセッション。
ラップの回では、ZEBBRAとR指定、関ジャニ丸山でラップを披露。
ここで関ジャニメンバーはそれぞれが楽器を担当。
生バンドによる「StreetDreams」の披露。
他にも【振り付けの世界に三浦大知も参戦!拡大SP】の回では「Black of Night」のダンスを披露。
これも振り付けに関しての詳細解説やマニアックな話の後だと違って見える。
この最後に待つジャムセッションで関ジャニを含めたパフォーマンスが披露され、そこに番組が集約されているところもポイントが高い。
あとみんな楽器が弾けてよかった。
これが嵐だと、こうは行かないわけですが……。
バランス感覚
・わかりやすく非常に丁寧な説明
・手を抜かないマニアックな情報
・キチンとバラエティとして面白い
堅苦しくなく、気楽に見れて、しかもわかりやすい情報バラエティの理想形。
他にも古田新太の存在感と的確なコメント(特に土屋太鳳のダンスを見たときは、さすが舞台人といったコメント)。
脇を固めるお笑い芸人ゲストと関ジャニとの相性も非常にいい。
格段にバランス感覚のいい番組じゃないだろうか。
今のフジにこれは作れない。
もし観ていないなら是非一度観ていただきたい番組のひとつ。
最後に、この番組で何度も放送されてるSia「アライヴ feat土屋太鳳」の圧倒的なコンテンポラリーダンスを貼ってこの記事を終わります。
曲もいいが、ダンスがさらに素晴らしい。