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記者の眼

人工知能がかなわない、日本の熟練農家

松山貴之=コンピュータ・ネットワーク局 ネット事業プロデューサー 2017/02/09 ITpro

 子どものころ、畑仕事を手伝わされたことがある。農家に育ったわけではない。父親は普通の会社員で、趣味としていろんな野菜を栽培していたのだ。キャベツにナス、キュウリ、ジャガイモなどなど。汗だくになって土を耕したり、水や肥料をやったりと、今となってはいい思い出だ。

 特によく覚えているのが、スイカを栽培したときだ。子どものころは嫌いな野菜があり、「どうせなら甘いものにすればいいのに」と思っていたので、「夏に食べられるようにスイカを植えよう」と父親が言い出したときは喜んだ。ただ、よく覚えているのは、残念な思い出としてだ。

 おいしくなかったのだ。自分も手伝ったのだから、それだけでおいしく感じやすいところだが、「お店で売っているスイカと全然違う」。「農家さんてすごいんだな」。そんなふうに思ったことを覚えている。

人工知能でできないだろうか

 今ならどうだろうか。筆者はまったく自信がない。おいしい農作物をつくるどころか、枯らさないようにするだけで精いっぱいだろう。ただ、筆者にはできなくても、「今なら人工知能があるじゃないか」と思った。

 現在の人工知能は、特定の問題であれば、大量のデータを基に自律的に意味を理解して表現できるようになってきた、と言われている。「農作物づくり」という領域に閉じれば、人工知能でおいしい農作物をつくれるのではないか。

 『人工知能がアドバイス! 誰でも作れるおいしいスイカ作りキット』みたいなものが売り出されたら、(植える土地は別にして)ちょっと興味がわく。

 専門家に聞いてみた。ITと農業に詳しい慶應義塾大学の神成淳司准教授によると、「農業の熟練性の知見も人工知能で実現できるようになるという声もあるが、私は、農業はすぐにはならないと思う」とのこと。「状況依存性の高い農業のような仕事では、人間の熟練性に勝るものはなく、現在のコンピュータをもってしても容易には追いつかない」からだそうだ。

 チェスや将棋、囲碁などの世界では、人工知能は人間のトップクラスと同等なのに、農業ではかなわないなんて。これは、人工知能の技術者がふがいないのではなく、「農家さんがすごい」と解釈すべきだろう。神成准教授は、日本の熟練農家といわれる人たちの技がいかにすごいかも教えてくれた。先生の著書から引用する。

イチゴがかかる病気に、炭疽菌の感染による炭疽病があります。(中略) 熟練農家は、「炭疽菌は臭いでわかるんだよ」と言います。農場で「ほら、この辺」と教えてもらったところを必死で嗅いでみましたが、何も臭ってきませんでした。

      『ITと熟練農家の技で稼ぐ AI農業』(神成淳司著、日経BP社発行)より

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