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人間は冷凍保存後に生き返ることができるか

ライフハッカー[日本版] 1/15(日) 12:10配信

Popular Science:まだ数は少ないものの、死後に極低温で冷凍保存されることを希望する人の数は増え続けています。こうした人たちは、科学の進歩が、いつの日か自分を眠りから目覚めさせ、死に至らしめた病を治してくれること願っています。しかし、将来そのような日は訪れるのでしょうか?

自然界を見れば、爬虫類、両生類、線虫、昆虫の一部で、冷凍保存が可能であることがわかっています。たとえば、特定の匂いを識別するように訓練された線虫は、冷凍された後も匂いの記憶を保持してました。アメリカアカガエルは、冬の間は氷の中で凍っていて、春になると復活し跳ね回ります。ところが、人体の組織は、冷凍や解凍の過程で著しく損傷してしまいます。その損傷を研究し、最小化することが、低温生物学の目的の1つとなっています。

細胞レベルの損傷については、まだあまり解明されていませんが、制御することは可能です。この分野における技術革新は、おもに2つの目的を目指して進んできました。1つは、冷凍中の保存状態を良くすること、もう1つは、解凍後の回復を促すことです。冷凍するときは、損傷を防ぐために、慎重に温度を調整し、さまざまな種類の抗凍結剤を施します。最大の目標は、氷晶の形成を防ぐことです。氷晶が形成されると、細胞や組織に置換や破裂といった損傷が起こります。ですので、細胞を“凍結“さぜずに、急速冷却することで、スムーズに“ガラス状態“に移行させることが目標となります。

そこで、粘性を変えて細胞膜を保護するために、糖およびデンプンのような単純な物質が使用されてきました。 また、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコール、グリセロールおよびプロパンジオールなどの化学物質が、細胞内の氷晶形成を防止するために使用され、不凍タンパク質が解凍時の氷晶成長や再結晶化を防ぐために使わています。

とはいえ、私たちが心配しなければならないのは細胞だけではありません。組織としてどうなるかも考える必要があります。一般的に、組織は凍結すると生化学的に安定した状態となります。超低温においては、劣化などの生化学的反応は、停止と言っていいほど遅くなります。それでもなお、凍結により、組織が細いひび割れを起こすなど、物理的に損傷するリスクが残ります。また、解凍時の温度変化がさまざまな問題を引き起こし、組織や細胞が損傷するおそれがあります。さらに、エピジェネティック・リプログラミングにより、エピジェネティック(環境や生活習慣で遺伝的仕組みが変化する)な影響も起こりえます。とはいえ、抗酸化剤などの化学物質を用いることで、解凍後の回復を促し、ある程度の損傷を抑えることは可能です。

また、体全体の回復にも独自の難題が待ち構えています。すべての臓器が一斉に活動を始めなければならないという問題です。臓器や組織への血流を回復させるのが困難であることは、救急医療の現場ではよく知られています。とはいえ、朗報もあります。冷やすことには悪い影響だけでなく、外傷を緩和する効果があることです。実際、溺れた後に回復した人は、冷水によって体が保護されていたように見えます。こうしたことから、手術に低温処置を施す研究が長年に渡り行われてきました。

低温生物学の科学技術イノベーションは、医学と経済の両輪によって進みます。細胞保存技術の多くが、不妊症治療と再生医療のおかげで発展しました。現在すでに、ガラス化、あるいは冷凍保存された細胞や単純組織(卵子、精子、骨髄、幹細胞、角膜、皮膚)が、解凍され、移植されています。

指や脚などの“シンプルな“身体パーツの冷凍保存もすでに始まっています。また、動物実験では、複雑な臓器(腎臓、肝臓、腸)の低温保存、解凍、再移植に成功した事例もあります。人間の臓器移植は、現在のところ、冷却(凍結ではない)された臓器を使いますが、治療目的での全臓器冷凍保存技術についても積極的に議論されています。

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最終更新:1/15(日) 12:10

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