あの木村新司氏が「割り勘事業」を始める理由

「paymo」はマネー最適化の起爆剤になるか

なぜ、今のタイミングで「個人間決済」をやるのか。木村新司氏に聞いた(撮影:尾形文繁)
2007年にアトランティス社を創業後、2011年にグリーに売却。また創業期のGunosy(グノシー)へ出資して、共同経営者の立場でマザーズへの上場に導くなど、シリアルアントレプレナーとして活躍してきた木村新司氏。2014年にシンガポールへ拠点を移した後は、ベンチャーへの投資に注力していたが、2016年6月に「スマホでの支払い文化の創出」を掲げ、AnyPay社を立ち上げた。同年9月には、オンライン決済サービス「AnyPay」を発表。これに続き、2017年1月19日、アプリで簡単に割り勘ができるアプリ「paymo(ペイモ)」をリリースした。
「paymo」では、割り勘が必要なときに、代金を立て替えていた幹事が請求リクエストを送ると、メンバーからクレジットカードや入金済みの残高から支払いが受けられる。幹事は受け取った金銭で、次の割り勘の支払いをすることもできる。サービス外での支払いに使う場合は、銀行口座に引き出すことも可能だ。まずは20~30代のクレジットカード保有者をターゲットとし、2017年末までに700万ダウンロードを目指すという。なぜ今、決済ビジネスなのか。木村氏に話を聞いた。

スマホによる個人間決済は急速に広がっている

──このタイミングで「割り勘」サービスに参入する理由は?

自分が日本で生活していて毎日不便に思っているので変えたいな、というシンプルな話。ご飯を食べに行った後に「割り勘」する時、後でアプリを使っておカネを返すことができたら、単純に便利ですよね。そもそも、スマホを持っているのに、それを使って友達同士でおカネを払ったりできないことがおかしい。

アメリカでは「Venmo」、中国でも「WeChat」などのサービスによって、スマホによる個人間決済は急速に広がっています。ユーザーは、現金、小銭をやり取りする時に不便を抱えているはず。「割り勘」の場面が、スマホを使った決済のニーズも1番大きいと考えました。

──「割り勘」の市場規模をどのように考えているでしょうか。

まず、「スマートフォンでおカネをやり取りする」という観点からみると、中国では年間に400兆円くらいスマホで決済しているとの調査がある。中国のGDP(国内総生産)は円に換算すると1000兆円以上。日本がおよそ500兆円ですから、市場規模としては、半分の200兆円くらいのサイズ感はあると思います。

そして、飲食業界の市場規模をベースに、そのうちの何割が「割り勘」されているか考えれば、その市場だけでも数兆円の規模はあると見込んでいます。

──「割り勘」を可能にするサービスは、これまでも存在していましたが、これまで周りで使っている人は見たことがありませんでした。

どうして、この国だけスマホでの個人間決済が普及していないのか。それは、国民IDがないことが大きい。個人間の「送金」を日本で行う場合、免許証などの個人情報を登録しなければいけません。

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