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豪雨被害の岩手のサケ・マス3孵化場、8月までの全面復旧急ぐ
昨年8月末に県内に上陸した台風10号の豪雨災害で使用不能となった県内4カ所のサケ・マス孵化(ふか)場のうち、下安家(あっか)(野田村)▽小本(岩泉町)▽松山(宮古市)-の3孵化場の概算の復旧費と国、県、地元自治体の負担割合が固まり、サケの来遊が始まる今年8月までの全面復旧を急ぐことになった。
復旧費は下安家が11億円、小本が15億円、松山が10億円。負担割合は基本的に国が2分の1、県と地元自治体が各8分の1。平成23年の東日本大震災でも被災した下安家は、県と地元自治体の負担割合がそれぞれ6分の1に増える。
残る県北孵化場(野田村)は下安家孵化場も運営する下安家漁協(島川良英組合長)が県の委託を受けて運営している。所有者の県は現段階で、「施設を復旧させるのかどうかについてはまだ結論が出ていない」としている。
サケは魚種別で水揚げ額が県内トップ。震災前の20~22年の年平均水揚げ額は74億5千万円(県調べ)で、総水揚げ額の3割を超えており、県や地元自治体は一刻も早い復旧を望んでいる。
震災に伴う稚魚の放流減に加え、来遊するサケが好む低温の海流が南下せず、28年のサケは水揚げ量が震災前の3分の1の約7千トンというまれに見る不漁となっている。稚魚の放流量減少は漁獲減に直結し、県内漁業の屋台骨を揺るがしており、県内20カ所の孵化場が加盟する県さけ・ます増殖協会は「4カ所が被災し、稚魚の放流量は計画の4億匹から1億匹少ない3億匹になる見込み」という。
特に下安家孵化場の稚魚の放流量は4500万匹と県内で2番目に多く、震災被災地視察のため18日に県内入りした今村雅弘復興相も現地を視察した。
説明役を務めた小田祐士・野田村長は孵化場周辺の防波堤のかさ上げなども陳情。今村復興相も「地域の大事な産業なのでしっかり応援したい」と応じ、島川漁協組合長も「8月の来遊に間に合うよう復旧に全力を挙げたい」と話した。