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御社営業部の「病気」治します

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「外堀会話」と「慢性言い訳」という病

藤本 篤志氏 

 「〇〇部長、A社の商談は受注間違いなしと言っていたのに、なぜ失敗したのかね。説明してみなさい!」

 「社長、A社の△△役員とは、昔から深い付き合いをしておりまして、私は彼を信頼していますし、彼も私を信頼していると思います。A社は、先日の株主総会で新たな財務担当役員が就任したのですが、どうも彼との折り合いが悪い様子で、予算取りの社内調整に時間が掛かっているとのことです。ですので、今回は失敗というよりも仕切り直し、ということだそうですので、彼を信じて待っているところです」

 「馬鹿者! 失敗を仕切り直しと言い換えても失注は失注だ。そんな言い訳を聞きたいのではなく本当に予算の問題なのかどうかを知りたいのだ。私のつかんだ情報によると、最近、ライバル社であるB社の役員が、頻繁に訪問しているらしい。実際、どうなのだ」

 「B社の新サービスは私もチェックしているのですが、帯に短したすきに長しという感じでもう一つインパクトを感じませんでした。それに比べて当社の新サービスは、いろいろな会社で評判を呼んでおり、さすが御社は目の付け所が違うと褒められることが多く、市場の反響は上々です。そのような状況ですので、あまりB社の動きに敏感にならなくても大丈夫かと存じますが......」

 「質問に答えろ! 要するにB社の動きを把握していないということだな! 失注の理由も先方の言うことを鵜呑みにしているだけだな!」

"外堀会話"が好きな日本人

 第三者として文章を読んでいるみなさんは、〇〇部長が社長の質問にストレートに答えず、何となく言い訳を言いながら直接答えることを回避している雰囲気が読み取れたのではないだろうか。

 私は、このような「何となく言い訳を言いながら直接の答えを回避する」喋り方を"外堀会話"と呼んでいる。この外堀会話は、日本の企業の中で蔓延していると実感している。お客様との会話、社内での会話、至る所で質問に直接答えない会話に遭遇するからだ(実際に日本だけではなく海外でも同じなのかもしれないが、私の数少ない海外でのミーティング経験では「Why? と聞かれたらBecause、Is it~? と聞かれたらYes(or No)」とストレートなキャッチボールだった記憶が鮮明に残っている)。

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