「関西に人が集まれば、日本が元気になる」
大阪市のテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」を運営するユー・エス・ジェイの森岡毅氏執行役員が、5年ほど前に取材で語っていた言葉が今も記憶に残っている。
世界企業、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)でブランド戦略を手掛けた実績を買われてユー・エス・ジェイに転職した森岡氏には「数字にシビアなマーケター(経営戦略立案者)」のイメージが強かったが、日本の将来像も視野に入れている戦略家なのだと感じたからだ。
従来の手法にとらわれない森岡氏の発想は、USJの復活の原動力だった。関西になじみの深いUSJだが、過度な地元依存から脱することに力を入れた。商圏の視界をアジアを広げれば、富裕層らも呼び込める。
「米映画」にこだわらず、日本のアニメを題材にしたアトラクションの導入を進めたのも、アジアをターゲットに据えたからだ。インターネット上で不正に高額で取引されていた転売チケットを使わせない措置にも踏み切り、公正さを重視するUSJへの信頼性を高めた。
「観光先進国」への国づくりに向けて政府は、2020年をめどに訪日外国人旅行者を4000万人にする目標を掲げる。「大阪の遊園地」から「アジアのテーマパーク」へと変ぼうしたUSJが立地する大阪はその一翼を担う。会見で語った「日本の元気」は確かに関西の肩にかかる。
森岡氏は、今月末に会社を去る。次はどこで何をするのか。明らかにされていないが、次の舞台での活躍にも期待したい。(阿部佐知子)
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