2017.1.19 05:00

【甘口辛口】日本将棋連盟・谷川会長の辞任…大局観を見誤り得意の「光速流」の寄せを見せられないまま投了とは悔いが残るだろう

【甘口辛口】

日本将棋連盟・谷川会長の辞任…大局観を見誤り得意の「光速流」の寄せを見せられないまま投了とは悔いが残るだろう

谷川浩司氏

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■1月19日

 対局中のスマートフォン不正使用疑惑騒動の責任をとって日本将棋連盟の谷川浩司会長が辞任した。疑いをかけられた三浦弘行九段は第三者委員会の調査で「不正行為の証拠なし」との結果が出て、会長は「三浦九段やご家族につらい思いをさせて申し訳なかった」と謝罪したが、対応に苦慮するうちに心身ともに不調をきたしたようだ。

 史上2人目の中学生棋士で、21歳で史上最年少名人に輝いた谷川氏はタイトル通算27期、十七世名人の資格を有するスーパースター。見るからに温厚そうで「礼儀作法も実力のうち」といわれる将棋の世界で、対局中の気品にあふれた立ち居振る舞いには定評がある。

 半面、人柄が穏やかすぎてぐいぐい引っ張るタイプではなく棋士の間では“事なかれ主義”との声も聞かれる。ある棋士は言う。「当初、不正疑惑は別にして騒動のもとになったことに対して三浦さんが謝ると思っていたのではないか。事を荒立てず一件落着…とはいかなかったのが会長にとって一番の誤算だったようだ」。

 三浦九段が挑戦するはずだった竜王戦の挑戦者も、疑惑が出たあとすぐ丸山忠久九段に差し替えたが、これも拙速に事を運びすぎた。疑惑を指摘した渡辺明竜王が4勝3敗で辛うじてタイトルを防衛したが、とても指せる状態ではなかったという。挑戦者の代役がタイトルを奪取したら混乱に一層拍車がかかったろう。

 世間の風当たりも強く、実兄でアマ将棋の強豪谷川俊昭氏までがフェイスブックで「渡辺竜王の廃業と最高責任者谷川会長の辞任を求める」と訴えたほど。大局観を見誤り、スピード感あふれる得意の「光速流」の寄せを見せられないまま投了とは悔いが残るだろう。 (今村忠)

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