天皇陛下の退位に関する有識者会議の論点整理のポイント
安倍晋三首相の私的諮問機関「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」が23日に公表する論点整理の概要が分かった。天皇陛下の退位について、一代限りで認める案と将来の天皇にも適用する案について、利点と課題を併記する。状況の変化に対応できるなど一代限りの利点を多く記述し、「制度化には課題が多い」と明記する。
両論併記の形をとるが、皇室典範改正による退位の制度化に否定的で、一代限りの特別立法で対応する政府方針に沿った内容となる。また典範の付則に特別立法の根拠規定を置く案を「一代限りと将来の適用の双方に対応可能な考え方」として併記する。論点整理は、現行制度の摂政の設置要件の拡大では陛下の公務負担軽減ができないとして、退位が必要と指摘。一代限りの案の利点について、政治・経済状況や天皇の考え方、世論は変化するため、時代ごとに判断する必要がある点などをあげる。
首相官邸関係者は、陛下のおことばから意思を推察できるとし、今回は退位の要件を定めなくとも対応可能としている。課題としては、天皇が高齢化する問題は将来も起こりうることなどを指摘する。
一方、将来も適用する案は、憲法で皇位は「皇室典範の定めるところにより」継承すると定めるため、典範改正が憲法の趣旨に沿うことを利点とする。課題としては「個々の天皇により事情が変わるので、今の段階で退位の要件を決めることは難しい」など、制度化の問題点を複数あげる。ただしこれから審議を始める国会に配慮して、特別立法か典範改正かという法整備の手法には踏み込まない。将来の天皇にも適用するか、一代限りで認めるかについての考え方を示す。
政府は通常国会中の成立を目指し、特別立法を検討しているが、民進党などは典範改正を主張し、隔たりがある。法整備の手法については国会で合意形成を目指すという体裁にして、野党に配慮する。【松井豊】