【ニューヨーク=米州総局】トランプ次期米大統領は11日、ニューヨーク市内のトランプタワーで大統領当選後初めて記者会見を開いた。質疑応答の要旨は以下の通り。
▼冒頭発言
記者会見は以前はほぼ毎日のペースで開いていたが、それをやめたのは不正確なニュースが多すぎるからだ。情報機関から流れたとされる最近のニュースは、それが本当に情報機関から出たとすると大きな汚点と言える。そうした情報を政府機関が流すべきではない。1社のテレビ局と1社のメディアグループが流したニセのニュースに対し、断固たる態度で接しているメディアは職業意識が強く称賛に値する。
この数週間に我々は多くの朗報をもたらした。今後数週間に中西部での工場建設など大きなニュースが発表される。すでに昨日はフィアット・クライスラー(・オートモービルズ)が大規模な工場を米国内に建設すると発表した。フォードもメキシコの10億ドル規模の工場建設を取りやめ、ミシガンで既存工場を大幅に拡大すると発表した。ゼネラル・モーターズも追随すると期待している。それ以外にも多くの企業が同様の対応をすると思う。
多くの業界が米国に戻ってくる。製薬会社も戻る必要がある。米製薬業界はひどいことに、我が国から海外にどんどん出て行った。薬を我々に売る一方で、国内ではほとんど製造していない。薬価に関する競争状態も作り出さなければならない。製薬業界は多くのロビイストを抱えており、その力は絶大だ。その結果、価格競争がなく、我が国が薬品の世界最大の買い手にもかかわらず、適切な価格競争が行われていない。価格競争を生み出すことで何十億ドルものコストを節約できるようにするつもりだ。
他の業種でも同様のことを実施する。航空機もその1つだ。私は軍司令官と関わりが強い。(次期ステルス戦闘機の)F35の発注などに関しては予定が大幅に遅れており、予算もオーバーしている。これはよくない。価格競争を促進することで航空機購入のコストも下げる。
(アリババ集団の)ジャック・マー氏や多くの企業のトップが訪問してくれ、我が国に大きな利益をもたらしてくれることになった。私が大統領選で勝たなかったら、こうした企業のトップが我が国を訪問することはなく、他の国でビジネスをすることになっていただろう。
多くの人が指摘しているように、今、これまでなかったような熱気が経済にみなぎっている。雇用創出のために努力を惜しまない。私は雇用創出では最適な人間だ。そのためには幸運や他の要素も必要だが、本物の雇用創出のために努力する。今のところ私がやってきたことは上出来だと思う。
今日、退役軍人省の長官にデビッド・シュルキン氏を指名する。我が国の退役軍人の待遇は最悪で、退役軍人病院ではがん患者も医者に診てもらうまでに十数日も待たねばならない。シュルキン氏の統率の下で、こうした状況を解消する。クリーブランド・クリニックやメイヨー・クリニックなど我が国の最高の病院と退役軍人病院を提携させる計画だ。
Q 先週の情報機関との会談について。
A この会談は機密指定されており、自分は語る立場にはない。会談には多くの立会人も出席したが、そうした人々が情報を流したことは不名誉以外のなにものでもない。この会談についてのニュースを後から見たが、内容はまったくの事実無根だ。情報を流した者は我々に敵対するグループで、まったくのウソを流した病的な者たちだ。会談内容をニュースに流すのは不適切だし、不名誉なことだ。
サイバー攻撃をしかけたのはロシアだと思う。ただ、ロシア以外にもサイバー攻撃をしかけた国はあるとみている。つい最近も200万人の米国民の情報が盗まれた。おそらく中国のしわざだろう。こうした攻撃に対処するには我が国の世界最高峰の頭脳を結集する必要がある。
つい2週間前に6人のハイテク業界トップがここに集まった。サイバー攻撃から守るためにこうした頭脳を生かす。民主党全国委員会などはサイバー攻撃には裸同然だ。我々の頭脳を使えばもっと適切な防御ができたはずだ。共和党全国委員会もサイバー攻撃の対象になったが、我々は非常に強力な防御対策をしたおかげで情報流出は差し止められた。こうした対策を我が国全体に導入することが重要だ。
Q サイバー攻撃の情報はロシアとの関係にどう影響を及ぼすか。
A ロシアとプーチン大統領は、このニセのニュースはまさしくニセモノだとの声明を発表した。もしロシアが共和党全国委員会にサイバー攻撃をしかけて何かの情報を入手したとしたら、その内容を発表するに違いない。民主党全国委員会へのサイバー攻撃で得た情報を発表したのと同様に。
ヒラリー・クリントン氏が大統領選討論会の質問内容を事前に知っていたのに報告しなかったという事実がサイバー攻撃で暴露されたが、誰もニュースにしなかったことはひどいことだ。私が同じことをしたら選挙戦から脱落を強制されるほどのニュースだが。
Q プーチン大統領がそのサイバー攻撃を指揮したと言われているが。
A プーチン大統領はドナルド・トランプを好んでいる。これは米国にとっては負債というよりは資産だ。これまで米国とロシアの関係は最悪だった。ロシアは我々が(過激派組織)イスラム国(IS)と闘うのを支援することができる。我が国が最悪のタイミングで中東から撤退したことで生み出したイスラム国と闘うために、最も重要なことだ。ただ、今となってはこれからプーチン大統領とうまくやって行けるかどうかはわからない。でもヒラリー(・クリントン氏)がプーチン大統領とやり合う上でタフ(手ごわい)になれるとは誰も思わない。
Q モスクワなどでいかがわしい行為をしたとの疑いで、ロシアから脅迫されているという見解は正しいのか。
A 私が海外の国を訪問する際には、要人としてその行動には極めて注意を払う。ボディーガードも同行する。彼らにはホテルの部屋でもどこにでもカメラがあるから気をつけるよう警告する。これはロシアに限ったことではない。その自分がそのようなことをすると思うか。病気感染への恐怖も自分は人一倍強い。
Q ロシアでのビジネス・金融取引について。
A ロシアでは現在、ビジネスの取引をしていないし、融資も受けていない。不動産デベロッパーとして、自分は非常に負債が少ないし、ロシアでは融資はいっさいない。やりたければロシアで商取引をするのは簡単だ。しかし、それは利益相反につながる可能性があるのであえてやらない。
またこの週末にドバイの友人から20億ドルの不動産開発取引のオファーがあったが断った。大統領になったとしてもこうした商取引は違法ではないと3カ月ほど前に知ったが、自分の立場を利用したビジネスはしたくない。ただ、組閣メンバーは利益相反の規制が適用される。私は大統領とトランプ・オーガニゼーションの仕事をやろうと思えば両方できるが、それは控えたい。
Q 税務申告書の提出について。
A 税務申告書は現在、会計監査中なので、提出はしない。私の税務申告書の中身を気にしているのは記者だけだ。大統領に選出されたのだから国民は税務申告書のことなど気にかけていない。それに税務申告書から得られる情報などそれほどない。
私の経営する会社の経理情報を見れば、かなりのことがわかり、しかも私の会社が海外でも多くの国で取引をし、予想以上に大きく力があることがわかるはずだ。この会社を2人の息子にまかせることになる。ここにある書類は息子たちに会社をまかせるために私が署名したものだ。