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【解説】謎の高速電波バーストの発生源をついに特定

ナショナル ジオグラフィック日本版 1/7(土) 7:20配信

30億光年の彼方にある矮小銀河から届く

 宇宙では毎日、何千という不思議な天体が高速電波バーストを発している。電波バーストの持続時間はわずか数ミリ秒だが、その間に太陽5億個分ものエネルギーが発生する。

望遠鏡で撮影した高速電波バーストの発生源

 この「高速電波バースト(FRB)」の存在を天文学者たちが知ったのは、つい10年前のことである。彼らはそれ以来、電波バーストの発生源の位置を正確に特定して、何が(もしかすると誰が)電波バーストを作り出しているのかを明らかにしようと取り組んできた。

 2017年1月4日、ついに高速電波バーストの発生源を特定したとの発表があった。天文学者のチームが、世界各地の強力な望遠鏡のネットワークを利用して、約30億光年の彼方にある矮小銀河が発する高速電波バーストを捉えることに成功したのだ。

『ネイチャー』と『アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ』に発表された今回の発見には深い意味がある。これらの電波バーストは、科学者が初期宇宙を覗き込むための新たな「窓」になると同時に、人類の宇宙観に突きつけられた謎を解くための重要な手掛かりになるかもしれないのだ。

 研究チームの一人で天文学者のシャーミ・チャタジー氏は、「昔は『天のように変わらない』という言い回しがありました」と言う。「けれども宇宙はどんどん変化しています。空は、私たちがまだ理解できていない、途方もなく強力な現象で沸き立っているのです」

毎日5000~1万回も発生

 高速電波バーストは2007年に発見された。オーストラリアのニューサウスウェールズ州にあるパークス天文台で過去のデータを調べていた天体物理学者が、2001年8月24日に異常に強力なエネルギーの噴出が検出されていたことに気付いたのだ。その持続時間はわずか5ミリ秒だった。

 天文学者たちは、当初は懐疑的だった。「局所的な干渉ではないのか、近くの牧場でヒツジが電気柵にぶつかって発生した電波ではないのかと言われました」とチャタジー氏。

 同じパークス天文台で長年観測されていた別の異常な信号が、電子レンジによるものだと判明したときには、疑いはさらに大きくなった。

 けれどもその後の観測により、高速電波バーストは実際に宇宙で発生したものであると証明され、今では宇宙全体で毎日5000~1万回も発生していると推定されている。

 これだけ多く発生しているにもかかわらず、その発生機構は不明である。

「実際に観測された高速電波バーストの数より、発生機構に関する理論の数の方が多いくらいです」とチャタジー氏。

 ある人は、高密度の中性子星(超新星爆発を起こした巨大な星の残骸)がお互いに衝突したり、彗星に衝突したりすることにより生じると考えている。マグネター(強力な磁場を持ち、高速で回転している中性子星)のフレアであると主張する人もいる。星が崩壊してブラックホールになるときの断末魔の叫びかもしれないという人もいる。

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最終更新:1/7(土) 7:20

ナショナル ジオグラフィック日本版

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