日本赤十字社の医療施設である福岡市西区の今津赤十字病院(藤井弘二院長)で2016年8月、難病の入院患者の福岡県糸島市の女性(当時68歳)がトイレに放置されて心肺停止になり、約1カ月後に死亡していたことが同病院への取材で分かった。
同病院によると、女性は脳の神経細胞が変性し筋肉のこわばりなどを起こす難病「多系統萎縮症」で、床ずれの治療のため16年8月8日に入院。左半身が不自由で車椅子を使っていた。同12日午前10時過ぎ、女性看護助手が院内のトイレに連れて行き別の仕事で離れた。1人になった女性はトイレ内で意識を失ったとみられ約2時間後に心肺停止の状態で見つかり、9月9日に亡くなった。
女性は過去にも血圧が下がってトイレで意識を失ったことがあり、病院内では付き添いが必要と申し送りをしていたが、女性看護助手には伝わっていなかった。
病院は当初、女性看護助手の話に基づき「5~10分おきにトイレの様子を見に行った」と女性の家族に説明した。しかし、虚偽だったことが判明し家族に謝罪した。同病院の武田義夫事務部長は「当院の医療過誤と認識している。申し訳ない」と話している。現在は再発防止のため文書で申し送りをしているという。
福岡県脊髄(せきずい)小脳変性症・多系統萎縮症友の会事務局は「事故も虚偽の説明もあってはならない。病院は事実関係をきちんと調査し、二度と繰り返さないよう努めてほしい」としている。【山下俊輔、林由紀子】