写真・図版 12月30日、2016年の日本株はTOPIXが年間で1.85%安となり、いわゆる「アベノミクス相場」が始まった12年以降、暦年で初の下落となった。銀行株が年前半に大きく下落したほか、医薬品やインバウンド関連もさえなかった。写真は大納会での「くまモン」(中央)とリオ五輪女子レスリング金メダリストの伊調馨さん(右)、30日撮影(2016年 ロイター/Toru Hanai)

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 [東京 30日 ロイター] - 2016年の日本株はTOPIXが年間で1.85%安となり、いわゆる「アベノミクス相場」が始まった12年以降、暦年で初の下落となった。銀行株が年前半に大きく下落したほか、医薬品やインバウンド関連もさえなかった。

 一方、好調だったのは任天堂<7974.T>が主導したその他製品。業績拡大の期待で半導体関連も堅調だった。日経平均<.N225>は5年連続の上昇となり明暗を分けた。

 <時価総額、アベノミクス相場で初の減少>

 TOPIXは昨年末比28.69ポイント安の1518.61ポイントで今年の取引を終了、年間で5年ぶりの下落となった。一方、日経平均<.N225>は同80円66銭(0.42%)高の1万9114円37銭と5年連続での上昇。1978年─89年の12年連続に次ぎ、戦後2番目の連続上昇記録となった。

 TOPIXと日経平均が明暗を分けたのは、銀行株の影響が大きい。日銀がマイナス金利を導入を決めた1月末以降、時価総額の大きいメガバンクが大きく下落。米大統領選後は持ち直しの動きをみせたものの、業種別指数の銀行業<.IBNKS.T>は年間で8.34%安となり、時価総額ベースのTOPIXが下落した主因となった。

 東証1部の時価総額は560兆2470億円となり、前年末から約11兆6000億円減少。時価総額の減少もアベノミクス相場では初となる。 

 <海外勢は年間売り越しの公算>

 全体的な日本株の動きとしては、年初から夏にかけて、1ドル99円台まで進行した円高と連鎖した下落基調に入り、6月24日には1万4864円の年初来安値を記録した。だが、秋以降は回復基調に入り、米大統領選をきっかけに上昇を加速。足元は昨年末とほぼ変わらない水準に戻している。

 この乱高下は、海外投資家の売買が大きな影響を与えている。現物と先物合計で今年1月から9月までに約7.3兆円売り越したが、10月以降は4.8兆円の買い越しに転じた。12月第3週までのトータルでは約2兆4360億円(15年は年間で約3兆2820億円の売り越し)となっており、2年連続で海外勢は売り越しとなる公算が大きい。

 三井住友アセットマネジメント・シニアストラテジストの市川雅浩氏は「2012年以降はアベノミクスへの期待で株高と円安が進んだが、海外投資家を中心に、この期待が剥落したのが15年の夏場以降。今年もその調整の過程にあった」と指摘。今年11月以降の日本株の上昇も「『トランプラリー』など外的要因によるところが大きい。国内の経済政策に対する信頼感が完全に回復したわけではなく、こうした点が今年のTOPIXの下落にも表れた」と話す。

 <ポケモン相場で任天堂が急伸>

 年間のセクター別のパフォーマンスは、その他製品が17.76%高と、33業種中トップとなった。スマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」の大ヒットを受け、従来の据え置き型ゲーム中心のビジネスから転換するとの期待が膨らんだ任天堂株が、この1年で46.5%高となったことが大きい。

 このほか、石油・石炭(8.35%高)、機械(7.74%高)が大きく上昇。原油相場の持ち直しや、トランプ米新政権の大規模な財政出動への期待が支援材料となった。

 半面、下落率トップは空運で16.55%安。「原油価格の回復が逆風。英国のEU離脱決定後の人の動きの変化へ懸念もあった」(高木証券・企業調査部長の藤井知明氏)という。前年に上昇率で上位にあった医薬品は年間で10.58%安。小野薬品工業<4528.T>のがん治療薬「オプジーボ」など、薬価引き下げによる業績への悪影響が懸念されたようだ。

 <インバウンド関連失速>

 TOPIX500<.TOPX500>構成銘柄では、アドバンテスト<6857.T>が94.5%高と最も大きく上昇した。円高環境下にもかかわらず、同社は17年3月期の連結純利益予想を2度上方修正。半導体試験装置の堅調な需要が追い風となったほか、連結配当性向の方針を半期30%以上に変更したことも、株主還元に前向きな姿勢と受け止められた。

 上昇率上位にはSUMCO<3436.T>やSCREENホールディングス<7735.T>など半導体関連が相次いでランクイン。「3次元NANDフラッシュメモリーなど新しいタイプの半導体が普及期を迎えたため、それに伴う設備投資需要が増えた。有機ELパネルなどの需要増を背景に来年も製造装置の受注が伸びる」(大和証券・シニアストラテジストの石黒英之氏)との声が聞かれた。

 一方、下落率トップは主力ゲームの落ち込みで17年9月期に大幅減益となる見通しとなったコロプラ<3668.T>。カシオ計算機<6952.T>も主力製品の一つである時計の売り上げが不振なほか、円高を背景に、インバウンド需要も落ち込み、大きく下落した。燃費不正が発覚した三菱自動車工業<7211.T>も急落している。

 ●セクター別騰落率ランキング 

 年間上昇率上位10業種 (%) 

 その他製品 17.76 

 石油・石炭製品 8.35 

 機械 7.74 

 卸売業 6.93 

 水産・農林業 5.83 

 化学工業 5.75 

 情報・通信業 3.86 

 金属製品 3.84 

 電気機器 2.83 

 建設業 2.06 

 

 年間下落率上位10業種 (%) 

 空運業 -16.55 

 電気・ガス業 -12.33 

 医薬品 -10.58 

 海運業 -10.20 

 輸送用機器 -8.38 

 銀行業 -8.34 

 陸運業 -7.97 

 不動産業 -7.70 

 繊維業 -6.58 

 小売業 -5.00 

 

 ●TOPIX500ベースの年間騰落率ランキング

 

 上昇率上位10銘柄 (%) 

 アドバンテスト <6857.T> 94.5 

 トクヤマ <4043.T> 68.8 

 ライオン <4912.T> 67.8 

 コナミ HD <9766.T> 63.4 

 SUMCO <3436.T> 63.4 

 スクリン <7735.T> 61.5 

 三菱ガス化学 <4182.T> 60.4 

 出光興産 <5019.T> 60.2 

 ペプチドリーム <4587.T> 56.9 

 スタートトゥデイ <3092.T> 54.1 

 

 下落率上位10銘柄 (%) 

 コロプラ <3668.T> -58.6 

 日医工 <4541.T> -42.5 

 カシオ計算機 <6952.T> -41.9 

 小野薬品工業 <4528.T> -41.1 

 東洋ゴム工業 <5105.T> -39.5 

 Jパワー <9513.T> -37.8 

 四国電力 <9507.T> -37.7 

 セブン銀行 <8410.T> -37.1 

 三菱自動車工業 <7211.T> -35.3 

 リゾートトラスト <4681.T> -32.7 

 

 

 

 (長田善行 辻茉莉花 編集:伊賀大記)