加藤一二三九段(左)の初手に続き2手目を指す藤井聡太四段=東京都渋谷区の将棋会館で2016年12月24日午前10時、猪飼健史撮影
今秋、14歳2カ月で史上最年少の棋士となった藤井聡太(そうた)四段(14)の公式戦初対局となる第29期竜王戦6組ランキング戦が24日午前10時、東京都渋谷区の将棋会館で始まった。対戦相手の加藤一二三(ひふみ)九段(76)は、藤井四段に破られるまで14歳7カ月の最年少記録を持っていた棋士で、現役では最年長。年齢差は62歳6カ月で、これまでの記録を更新した。
午前9時半ごろ、加藤九段がタクシーで将棋会館に到着。振り駒の結果、歩が4枚出て加藤九段が先手となった。詰め襟の学生服姿の藤井四段に対し、加藤九段は紺色のスーツに、水色のネクタイ。ネクタイはいつも通り、畳に付くくらいの長さで締めている。加藤九段は時折駒の位置を直しつつ、藤井四段は盤面を見つめながら対局開始を待った。
午前10時、記録係が声をかけると、加藤九段は7六歩と角道を開けた。藤井四段は間を置かず8四歩と飛車先の歩を突いた。互いに序盤の指し手のテンポは速く、矢倉戦となった。
対局場となった将棋会館の特別対局室には、約50人の報道陣が詰め掛け、窓ガラスが曇るほどの熱気に包まれた。
対局を前に藤井四段は「偉大な先輩とデビュー戦で対局できるのは光栄です。最善を尽くし、いい将棋を指したい」とコメント。敬虔なクリスチャンで知られる加藤九段は「神の計らいで62歳差の対戦が実現する運びとなり棋士冥利に尽きる思いです。21世紀生まれの藤井四段との対戦で、19、20、21世紀生まれの棋士と対戦する初の記録を樹立することができました。14歳でデビューを飾った当時と少しも違わぬ、みずみずしく澄み切った心境で盤面に向かう所存です」と話していた。
過去の最大年齢差対局は1986年8月のC級2組順位戦、小堀清一九段(故人、当時74歳)と羽生善治四段(現王位、当時15歳)の58歳7カ月。【最上聡、山村英樹】