こんな記事があった。元コメディカルとして返答ブログを書いてみたい。
今から「ニセ医学」「代替医療」などについて書いていくので、冒頭で言葉の定義をしておきたい。
■ニセ医学…医学、医療を標榜しているが実際には効果がみられないもの。宗教的な呪術行為に近いもの。
■標準医療…医師免許保持者による医療行為。公立病院などでの医療行為。保険治療をさす事もある。国によって診療報酬の点数が細かく定められている。
■周辺医療…いわゆるコメディカル。リハビリテーション、接骨院、鍼灸院など。保険治療可能。準医療行為とも呼ぶ。病院の併合施設である場合もある。携わる人は国家資格保持者。
■代替医療…古くから民間で発達してきた医療行為。医学的に立証された民間医療もある。この行為をクリニックで行う所もある。漢方薬を代替医療とする場合もある。
(周辺医療と代替医療の垣根は曖昧である。戦後の保険制度の変更が背景にある。)
■医療類似行為…無免許、無資格による整体、リラクゼーションを目的としたマッサージなど。
※医療の世界は混沌としており、医師自身があきらかなニセ医学に傾倒し、患者に不利益を与える医療類似行為をしている場合がある。
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以前、民間療法についての記事を書いたことがある。私が考える、代替療法についての考えはほぼここで述べている。
このブログで私が伝えたかったことは「最終的に大事なのは、患者側の判断力である」ということだ。
冒頭のブログでも、筆者の宇樹さんがさまざまな治療法をためしたことが述べられているが「それは本当に医療行為として行われたのか?」ということがひっかかる。「ニセ医学」と言っているが、本当にそれは「ニセ医学」だったのか。
たとえば、アロママッサージは最近はあちこちで見かけるようになったが、「医療行為として」のアロママッサージをうたっているところはほぼないはずだ。
街で見かけるようなアロマのお店のほとんどは、あくまでも「リラクゼーション」としての効果をうたっている。もし「頭痛が治る!」「生理痛が治る!」などの大々的な広告をしていたら、それは医師法違反にあたるから保健所に通報していい。
だから最初から「医療」をうたっていないところへ行って医学的な効果を期待するのはちょっと違うのではないか。リラクゼーションとしての効果があれば、それでいいはずなのだ。
私が気になったのは、ブログが標準医療VS代替医療の視点で書かれていることだ。代替医療や周辺医療をすべてニセ医学だと言いきってしまうのには個人的にはとても抵抗がある。
医療現場でも、最近では産院での産後のケアにアロママッサージを取り入れて、そのためのスタッフが常駐しているという産院が増えてきた。アロママッサージによるリラクゼーション効果が、産後の経産婦さんの精神的な緊張を解きほぐす効果が期待できたり、クリニック側も付加価値のプラスによって集客が期待できるという側面があるからである。
私個人の考えだが、より良い治療のためであれば代替医療を補完的に取り入れていくのはありだと思っている。患者に益があるのであれば、それはどんどん推進されてよい。
自分自身が臨床現場に居たときもそうだったが、とにかく患者が楽になることが、もっとも尊重されるべきことなのだ。こう考える医療従事者はたくさんいると思う。
何よりも患者側にはクリニックを選ぶ自由と権利がある。純粋な標準医療を受けたければ、そのような病院へ行けば良いのである。
宇樹さんの場合もそうだ。改めて受けた標準医療で効果が見られたからバッサリとそれまでの代替医療を無駄なものと切ってすてているが、そもそも標準医療に失望したからこそ代替医療へ行かざるをえなかったのではないか。
アメリカのように、標準医療が高額になりすぎてホメオパシーに頼るしかないとなるとこれはさすがに悲惨だが、幸いにしてまだ日本の保険機構はギリギリのラインでそのシステムを維持している。
だが、これからは社会保障費の削減と国の税収低下によって、今のような保険による標準医療が受けられなくなっていく可能性のほうが高い。
少し前のデータだが、公立病院のほとんどは赤字経営だ。さらに少子化によって自治体自体の税収が低下してこの赤字を自治体側で補填できなくなると、病院が消滅する自治体が出てくる。地域によっては病院で治療を受けたくても病院そのものがない。これは過疎化した日本の地方ですでに起きている。
医師の増員や力量のボトムアップ、高い水準の標準化はとても理想的だが、そこまで到達できない切実な現実がある。
これからの医療はAIが進出してくるだろう。少しでも人件費をおさえるために。医師の診療報酬は高いから、その半分以下の給料で働いているコメディカルは増員されるかもしれないが、診察そのものはAIによって行われるところが増えてくるだろう。
女性のアスペルガーと心身の不調の難しさ
先日、『女性のアスペルガー』(宮尾益知/講談社)という本を読んだ。女性の場合、アスペルガーに気づかず、症状が体への不調に出てしまう人が多くいるという。生理前の症状の悪化、生理の開始や二次成長期に体が耐えられずに症状に苦しみ始めることが多いという。
内容的には以下のブログにくわしい。
宇樹さんご自身でも述べておられるが、発達障害の人で身体感覚過敏が強い場合、すべての体の不調を通常の人の何倍もの苦痛として受け取ってしまう。体の感受性がとても強いからだ。
だから、まず発達障害への治療を行うほうが本質的な解決に結びつくのだろうが、残念なことに発達障害とりわけアスペルガーの治療薬はないに等しい。発達障害はあまりにも不明なことが多すぎるのだ。
臨床医をいくら増やしたところで、アスペルガーベースの難知性心身症をスパッと治すことはほとんどの医師にできないだろう。
難しいのは、本人が自分が発達障害だとまったく気づかない場合である。体に苦しみをかかえてあちこちの病院をハシゴする(宇樹さんもこれだろう)。
女性の場合は、社会性が発達していることも多く、一見発達障害とわからない例も多い。だから検査所見上には何も異常がない状態なのに、本人は強く不調を訴えてくるということになる。身体感覚過敏そのものを知らない人、自分がそうだと気づかない人もいる。これは医療者側もかなり難しい局面に立たされることになる。
フィードバック機構が欲しい
私自身、心身の不調がひどかったので、副腎ホルモンの検査に行ったりしたのだが、結局背景にあるのが自分のアスペルガーだった。だが、この結果をかつて行った病院へ知らせる機構がないのだ。個人的にハガキでも書こうかと思っているが、こうしたフィードバック機構がないことで、情報の蓄積がうまく行っていない。このことが患者が病院ショッピング→医療費の増大へとつながってしまう。患者によるなにがしかのフィードバック機構が欲しいところだ。
おわり