北方領土で共同経済活動、平和条約へ「一歩」

日ロ首脳が共同記者会見で語ったこと

共同記者会見を終え、握手を交わすロシアのプーチン大統領(左)と安倍首相(16日午後4時25分、首相公邸で)=青山謙太郎撮影

安倍首相は16日、ロシアのプーチン大統領と首相公邸で共同記者会見し、北方4島での「共同経済活動」について、日露双方の立場を害さない形での実施に向けた協議を始めることで合意したと発表した。

首相は、「(共同経済活動は)平和条約締結に向けた重要な一歩だ」と強調した。両首脳は、元島民らが査証(ビザ)なしで4島を訪問できる仕組みの改善を検討することでも合意した。北方4島の帰属を巡っては、プーチン氏が依然、強硬姿勢を示しており、交渉の進展はなかったとみられる。

両首脳は、15日に山口県長門市で5時間近く会談したのに続き、16日は首相官邸で約1時間10分にわたって会談。その後、プレス向け声明を発表し、共同記者会見も行った。

声明は、北方領土(歯舞、色丹、国後、択捉の4島)での共同経済活動の実施について、「平和条約問題に関する日露の立場を害するものではないことに立脚する」と明記した。「日本の法的立場を損なわないことが共同経済活動実施の前提」とする日本政府の主張を踏まえた文言とみられる。首相は共同記者会見で「共同経済活動を行うための『特別な制度』について交渉を開始することで合意した」と説明した。

「特別な制度」の設計は今後の事務レベル協議に委ねられるが、プレス向け声明は「しかるべき法的基盤の諸問題が検討される」とした。共同経済活動を実施する分野は、漁業、観光、医療などが想定されている。

両首脳は16日、元島民がビザなしで島を往来する仕組みについて、〈1〉出入域手続きを行える地点の追加〈2〉現行手続きの簡素化――などの検討でも合意した。

プレス向け声明には、「両首脳は、平和条約問題を解決する自らの真摯(しんし)な決意を表明した」ことも明記された。

首相は共同記者会見で、「日露両国民の相互の信頼なくして、平和条約締結というゴールにたどり着くことはできない」と述べた。共同経済活動などを通じて領土問題の打開を図る考えを改めて示したものだが、うまくいくかどうかは不透明だ。首相は会見で、「解決にはまだまだ困難な道が続く」とも述べ、領土交渉の進展が容易ではないことを認めた。

プーチン氏は「相互協力の中で平和条約に近づくことが大事だ。経済的な関係を発展させ、平和条約を後回しにするわけではない」と語った。北方4島については、第2次世界大戦の結果、ソ連(ロシア)領になったとの従来の主張を繰り返した。

プーチン氏は16日夜、大統領特別機で羽田空港を出発し、帰国の途についた。

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