伊東和貴
2016年12月13日15時08分
日本とロシアを「両思い」に――。15日に迫った山口県での日ロ首脳会談に期待をかける国後島の元島民3世の青年がいる。かつて「敵の島」と憎んだ北方領土を何度も訪れ、ロシア本土の若者とアニメを通した交流を重ねてきた。「もっと互いを知ろう」と訴える。
「私が別の船に乗っていたら、あなたは生まれていなかったかもしれない」
東京の会社員西田裕希さん(26)は小学4年の夏、祖母(80)の話に衝撃を受けた。生まれ育った埼玉県から北海道根室市の父の実家に帰省中だった。
終戦後、旧ソ連が国後島に侵攻。祖母と親族約20人が2隻の船で逃げ、1隻は沈没した。根室に着いた祖母は中学卒業後すぐに働き、苦労の連続だった。「おばあちゃんと一緒に島に戻りたい」と思った。
「敵を知るため」。ロシア語を学べる高校に進み、大学ではロシア文学を専攻。1年だった2008年の夏、元島民らが対象の「ビザなし交流」で初めて色丹島を訪れた。「どんなやつらが占領しているのか見てやろうと、拳を振り上げて乗り込んだ」
ところが、島民は素朴で温かかった。小学校で児童と交流し、地元家庭でロシア料理を食べ、山を一緒に歩いた。翌年は国後と択捉へ。島民と交流を重ねるなかで「ロシア政府と国民は違う」と感じ、「力任せで解決するなら旧ソ連と同じ。自分は日ロの懸け橋になりたい」と思った。
大学3年の冬に日本語講師とし…
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