(英エコノミスト誌 2016年12月3日号)
インド・コルカタで、ナレンドラ・モディ首相に対する抗議デモで左派活動家らが燃やした500ルピー紙幣のポスター(2016年11月14日撮影)。(c)AFP/Dibyangshu SARKAR〔AFPBB News〕
ナレンドラ・モディ首相はルピー改革がもたらしたダメージの軽減策を早急に講じる必要がある。
自国通貨の劇的な改革を唐突に実行した国はインドが初めてではない。だがその先例は、1987年の旧ビルマ、1991年の旧ソビエト連邦、2009年の北朝鮮など、励みを与えてくれるものではない。旧ビルマでは革命が始まり、旧ソ連は崩壊し、北朝鮮は飢餓に陥った。
だからこそインドのナレンドラ・モディ首相は、最も高額な2種類の紙幣――500ルピー紙幣(約800円)と1000ルピー紙幣(約1600円)――を無効にするという予想外の発表を11月8日に行う前に、下準備をしておく必要があった。
ところが首相はそれをせず、ぶざまな結果になってしまった。公表されている目的がたとえ達成できたとしても、余計な損害が生じることになるだろう。
小売店は即座に旧紙幣の受け入れを停止した。旧紙幣の持ち主は年内に銀行に預けるか、小額の紙幣と交換するか、または新たに発行される新500ルピー紙幣か新2000ルピー紙幣と交換しなければならない。
市中に出回っている現金の合計額の86.4%を占める紙幣が突然法定通貨でなくなるという事態は、予想どおりの無益な困難をすでに引き起こしている。
やり直しはもうできず、政治的にも考えられないが、モディ氏はダメージの抑制にもっと取り組むべきだ。そして、この混乱を引き起こした原因である、自分自身の誤ったリーダーシップ・スタイルも捨て去るべきだろう。