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生活保護のリアル~私たちの明日は? みわよしこ

貧困に喘ぐ沖縄の母子世帯、生活保護も頼れない苦境の裏側

みわよしこ [フリーランス・ライター]
【第72回】 2016年12月9日
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この数年、子どもの貧困が社会問題として注目されている。「子どもの6人に1人が貧困」という事実は、もはや日本の常識になっている。でも、有効な対策を政策化するために必要な実態把握は、まだ遅れに遅れているのが実情だ。

まだ何も理解されていない
深刻な子どもの貧困問題

全国的に貧困率が高い沖縄県で、苦境に喘ぐ母子世帯。その知られざる実態を紹介し、行政が講じるべき対策を考える

 2016年も12月に入り、クリスマスイルミネーションやクリスマスプレゼントの広告を見かける時期となった。子どもや子育て世帯を支援する団体からは、クリスマスイベントやプレゼントのための寄付の呼びかけが相次いでいる。経済的に余裕のない親たちにも、夜中にこっそり子どものサンタクロースになる喜びを、もちろん子どもたちにはクリスマスプレゼントに目を輝かせる喜びを……その願いが痛いほど伝わってくる。

 では、日本にいる貧困状態の子どもたちを見るに見かねた宇宙人が、12月24日深夜、上空から日本の地上にサンタクロースを派遣するとしよう。サンタクロースは、子どもの貧困問題が特に深刻な地域を選んで、子どものいる世帯にプレゼントを置いて行くことができるだろうか。

 少なくとも、日本の公的調査・統計をアテにしている限りは不可能だ。なにしろ、都道府県別の子どもの貧困率は、今年2016年3月に山形大学准教授・戸室健作氏(社会政策論)の論文において、初めて明らかにされたのだから。

 貧困率が最も高いことがわかった沖縄県で、子どもの貧困問題の現状は、今どうなっているのだろうか。「しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄」代表で那覇市在住の秋吉晴子さんに、自らもシングルマザーとして働きつつ子どもを育て、また沖縄でシングルマザーの支援活動を続ける中で、見えてくる状況を聞かせていただいた。

2016年4月1日、沖縄県は独自に行った「子どもの貧困実態調査結果概要」を発表した。子どもの貧困率についても独自の推計を行い、全国で16.3%であるのに対し、沖縄県では29.9%であることを示した(赤線は筆者による)。ひとり親世帯の貧困率も58.9%と、全国の54.6%より高い。
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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、1匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


生活保護のリアル~私たちの明日は? みわよしこ

生活保護当事者の増加、不正受給の社会問題化などをきっかけに生活保護制度自体の見直しが本格化している。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を紹介しながら、制度そのものの解説。生活保護と貧困と常に隣り合わせにある人々の「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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