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所在不明「花ざかりの森」、自筆原稿を発見

インタビューに答える三島由紀夫

 作家、三島由紀夫(1925~70年)の初期代表作「花ざかりの森」の所在不明だった自筆原稿が、熊本市内の関係者宅で保管されていたことがわかった。16歳で執筆し、初めて「三島由紀夫」の筆名を使った作品の元原稿が、発表から75年ぶりに確認された。「三島」誕生の過程を伝える第一級の資料として注目される。

    「三島」誕生の過程伝える第一級資料

     見つかったのは400字詰め原稿用紙五十数枚で、ペン書き。41年、雑誌「文藝(ぶんげい)文化」に4回連載されたうちの3回分で、1回分ずつとじられていた。最後の約15枚分は欠けていた。初回の原稿の1枚目には、本名の「平岡公威(きみたけ)」の名が二重線で消され、右側に「三島由紀夫」と記されていた。三島が初めて原稿に書いた筆名と見られる。

     同誌の編集の中心者だった国文学者、蓮田善明(ぜんめい)(04~45年)の親族宅に保管されていたのを今年9月、作家で三島研究者の西法太郎さん(60)が確認した。西さんによると、連載3回目の原稿には推敲(すいこう)の跡が残っているという。発見された原稿は、くまもと文学・歴史館(熊本市)に寄贈された。

     「文藝文化」は、学習院中等科在学中の三島の恩師だった国文学者、清水文雄(03~98年)が蓮田らと発行していた国文学研究の同人誌。「花ざかりの森」は、三島の才能を見いだした清水の推薦で同誌に掲載された。それまで学習院の校内誌に小説や詩を発表していた三島が、初めて外部の雑誌に発表した作品で、少年の繊細な感覚で祖先への憧れを語る詩的な短編だ。

     三島文学に詳しい佐藤秀明・近畿大教授(日本近代文学)は「三島が初めて筆名を記したものと見ていい。いわば『三島由紀夫』誕生の瞬間を示すもので、年譜をたどる上で一級の資料だ。今後、活字になった文章との違いが研究の対象になる」と話している。

     原稿発見の経緯は14日発売の「週刊ポスト」に掲載される。【大井浩一】

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