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警察職員の懲戒 公表基準が甘くないか

 警察は身内の懲戒処分に関し、情報公開に後ろ向きと言わざるを得ない。昨年1年間に懲戒処分を受けた全国の警察職員293人のうち、99人について窃盗や強制わいせつなど法令違反がありながら、処分時に報道発表していなかった。

 強い権限を持つ警察は、身内に厳しくなければ市民の信頼を得られないだろう。警察は、懲戒処分の公表基準を見直すべきだ。

 人事院は、中央省庁が職員を懲戒処分する際の発表基準の指針を定めている。「職務に関する行為」「私的行為のうち免職・停職に当たる行為」は、公表するというものだ。

 警察職員の大半は地方公務員だが、警察庁はこの人事院指針に基づき、「国民の信頼を確保するため、発表が適当と認められる場合」も加えて公表の指針としている。

 警察の懲戒処分は、免職▽停職▽減給▽戒告の4種類だ。指針に従えば、私的行為については減給以下の場合、公表されないこともある。

 毎日新聞が情報公開請求で内容を確認した減給以下の未発表事例には目を疑うような中身が並ぶ。

 地下鉄の駅で、女性の上半身を衣服の上から触ったうえ、とがめた女性を突き飛ばし、駆けつけた駅員2人にも暴行した技官や、盗んだクレジットカードを使って同僚職員になりすまし、新幹線の回数券を購入した巡査らだ。

 明らかな違法行為である。減給以下の処分が適切だったのか疑問が残る。しかし、処分が発表されなければ、処分が甘くないかどうかチェックできない。結局は、警察組織全体の規律のゆるみや、モラルの低下につながりかねない。

 警察は逮捕権など強い権限を行使する組織だ。職員の法令違反について、市民の厳しい監視を受けるのは当然だ。人事院の指針を型通り当てはめるだけでは済まないだろう。

 その人事院の指針自体も見直しが必要ではないか。たとえば42都道府県が現在、職員の不祥事は職務との関連の有無にかかわらず、懲戒処分を全て発表しているという。

 国家公務員の方が地方公務員より公表基準が甘くていいという理屈はあるまい。懲戒処分は全て公表することを原則にすべきではないか。

 警察の不祥事を巡っては1999年に発覚した、神奈川県警が組織ぐるみで起こした事件を思い起こす。

 元警部補の覚醒剤使用を組織ぐるみでもみ消そうとし、事件当時の県警本部長や警務部長ら5人が犯人隠匿罪などで起訴され、有罪判決が確定した。ともすれば組織防衛に走りがちな体質を断ち切るためにも、警察は不祥事について高い透明性を示すべきだろう。

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