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通信・メディア、進む統合

米国の通信、メディア業界の勢力図

 【ワシントン清水憲司】ロイター通信は21日、米通信大手AT&Tが米メディア大手タイム・ワーナーを買収することで大筋合意したと報じた。実現すれば、巨大な通信・メディア企業が誕生する。既存の通信・メディア事業は、動画配信の新サービスなどとの競争にさらされ、成長を持続できるかが問われている。買収を通じて通信インフラとコンテンツの双方をそろえ、競争力を高める考えだ。

     ロイターによると、AT&Tは早ければ23日にも買収を発表するという。買収額は850億ドル(約8.8兆円)規模と見込まれ、合意すれば、今年最大の企業買収になる見通しだ。

     AT&Tは携帯電話やケーブルテレビ、インターネット接続で強みを発揮してきた。しかし、これらの分野は需要が一巡し、大幅な成長を見込みにくくなっている。タイム・ワーナーを買収して、自前の媒体にのせる動画などのコンテンツを充実させ、相乗効果で収益力を高める考えだ。AT&Tは2015年にも、米衛星放送大手ディレクTVを485億ドル(約5兆円)で買収しており、通信・放送からコンテンツまでそろえた総合的なメディア企業を志向する。

     タイム・ワーナーは、傘下にニュース専門のCNNなど複数の有力放送局、映画大手ワーナー・ブラザーズを抱える。近年は同社の映像コンテンツをテコに事業拡大を狙う他グループから、有望な買収相手とみられてきた。14年には、「メディア王」の異名を持つルパート・マードック氏が率いる米メディア大手の21世紀フォックスが800億ドル程度での買収を提案したが、物別れに終わった。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、米アップルも数カ月前に統合を打診したという。

     一方、AT&Tのライバルである米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズは15年に米ネット大手AOLを買収し、メディア事業に進出。今年7月には、米ネット大手ヤフーの中核事業を48億ドルで買収することで合意し、ヤフーのニュースや金融情報などのコンテンツを手に入れることになった。米ケーブルテレビ大手のコムキャストは有力テレビ局や映画大手を傘下に持つが、今年4月に米映画大手ドリームワークス・アニメーションの買収を決め、メディア事業の強化を進める。

     メディア事業への傾斜を強める通信会社だが、メディア自体が過渡期にある。放送局などの既存メディアは、好きな時に好きな番組を見られる米動画配信大手ネットフリックスやユーチューブなどとの競争が激化し、以前より広告を集めにくくなった。資金力のある通信企業やメディア企業が、新たな媒体を取り込んで多角的なサービスを提供し、生き残りを図る動きは続きそうだ。AT&Tによるタイム・ワーナー買収の報道を受け、21日のニューヨーク株式市場では「次なる業界再編につながる」との見方から、ネットフリックスや21世紀フォックスなどの株式が値上がりした。

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