「2025年問題」という問いの立て方自体が鋭い対立を招きかねない、と危惧しています。
団塊の世代が全員75歳以上になる25年以降も高齢者の医療や介護を維持し、現役世代の負担を増やすのか。あるいは生活に苦しむ現役世代に配慮し、サービスを削って高齢者の負担を増やすのか。いずれにせよ、高齢者と現役世代は分断されるでしょう。
「このまま社会保障費が膨らんだら財政が破綻(はたん)する」というフレーズをよくに耳にしますが、これは恫喝(どうかつ)です。予算に総枠をはめて危機をあおるやり方は、もう終わりにすべきです。
財政は本来、人を幸せにするためのもので、人を恫喝したり分断したりするためのものではありません。原点に返って、「何が必要なのか」を考えるところから始めませんか。
高齢者にとくに必要なのは医療や介護です。現役世代では、教育や子育て、仕事に関わることが挙がるでしょう。高齢者向けの政策も現役世代向けの政策も、両方やればいいのです。全員のニーズを満たす「必要原理」に立ち、所得制限を設けず、世代間の受益が調和した政策パッケージをつくることが大切。いろいろな状況にある人たちがそれぞれに尊厳を守られる政策になっていれば、敵対の構図を作らずにすみます。
そうすると「財源はどうするんだ」という批判が出てくるでしょう。でも、必要原理に立った政策は、負担に対する抵抗も減らします。負担すれば、自分にもメリットがあるわけですから。増税への抵抗を和らげることは、財政再建にとっても不可欠の条件です。
その意味では、消費税の扱いは再考が必要です。社会保障目的で税率10%への引き上げは決まりましたが、実際に社会保障の充実にあてられるのはたった1%分で、ほとんどが貧困対策です。第1段階として14年に5%から8%に上がった後、どれだけの人が充実を実感できたでしょうか。これでは10%への引き上げに抵抗が強まって当然。充実に使う分をもっと増やすべきです。
所得税や相続税の課税範囲を広げるなど、消費税以外の税のあり方も合わせて考えることも欠かせません。政策も税も、言い換えれば受益も負担も「誰かが」ではなく「誰もが」に切り替える。そして世代間や受益の有無による分断をなくしていくことが、安心して生活できる社会づくりに何よりも重要なのです。(聞き手・友野賀世)
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