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2016-09-24
いじめ加害者を主人公にするという暴挙――『聲の形』
映画 聲の形 オリジナル・サウンドトラック a shape of light[形態A]
- アーティスト: 牛尾憲輔
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2016/09/14
- メディア: CD
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現在公開中の京アニ最新作『聲の形』。
僕は公開二日目ですぐ見に行って、衝撃受けて速攻で原作も全部読んだクチなんですが。
しかしまーーーーーっキッツいな。誰にでもあり得る話で何処かしら刺さるところあるってのがほんまキッツい。誰も彼も弱い。全く他人事ではない。他人事に見せてくれない。(聲の形
(見た直後のツイート)
聲の形の原作一気読みしてる。こりゃ原作読まんと勿体無いわ。ちゃんと想像で補えるような作りにはなってるけど、友達について詳しくは原作でないとわからない。いや、そら全部やったら何時間あっても足りないし当たり前のことなんだけど。セットで読んで観るべきやなあ
(漫画読んだ後のツイート)
大きなネタバレはないと思いますけど、見てること前提の記事なので注意ね!
で、この作品について、先日このような話題をツイッターで見かけました。
『聲の形』はいじめっこ向け感動ポルノなのか - Togetterまとめ
↓ まとめ作った方が派生で書いた記事
「反省したいじめ加害者のことを『許さない!』と、いじめ被害者が主張するのは、危ない思想(by山本弘)」なのか - あままこのブログ
↓ それを読んだ僕のツイート
『三月のライオン』に「許さなくていいかな」ってセリフがありまして。あれはどう考えても許さんでいいだろって描かれ方だったけれど、仮にそうでなくても、許さなくていい。 / “「反省したいじめ加害者のことを『許さない!』と、いじめ被害…” URL
最初のTogetterが良いまとめなんですよね。
1P目だけだと、うへーいつもの不毛なやつだあって引き返したくなりますけど、最後まで読むと批判、擁護、その他諸々の意見が取り揃えられていて、読み直すと全部の発言が冷静に眺められるような作りで。
特に加害者側にこまごまと情状酌量の余地が設けられていていじめっ子が呑み込みやすく作られている点が醜悪だという批判に対して、そもそものメインの想定読者が(無自覚に加担する傍観者も含めての)加害者なので、加害者が呑み込めないものにしちゃったら本末転倒ではないのかって視点が出てくるあたりとか。
てか僕からすると「加害者に甘すぎる」って全然甘くなかったよ殺意めっちゃあったじゃん!? とも言いたくなるんですけどね。これに関しては誰に共感するかによって印象は変わってくるんでしょう。加害者視点で見ても、自分の行為を慰めてくれる感動物語なんて甘いもんじゃなく十分以上にエゲつない話になってたと思うけどなあ……。
ちなみに僕は被害者の経験も、傍観して緩やかに加担するって意味での加害者の経験もあるクチです。積極的に加担した自覚は無いけれど、いじめの加害者って無自覚にやるもんだから絶対やってないとかいう自信はない。
加害者視点でいじめを描くという暴挙
この作品の一番の特徴っていじめや障害を取り扱ったことそのものじゃなく、それを加害者の視点寄りに描いたってことですよね。いじめを取り扱った作品はそれこそ数えきれないほどありますが、いじめの被害者かその被害者を助けようとする人物視点で描いているものしか僕は見たことがありません。さすがに全く存在しないわけはないと思うのですが。
共感不能な完全な悪役として描かれているならともかく、十分に共感可能な人物として描かれている主役が同時にいじめも行っている。そんな罰ゲームみたいな話、誰も読みたがらないからでしょう。
でもいじめの性質の悪いところって、誰もが被害者になりえると同時に誰もが加害者にもなりえるところにあるわけで。主人公が加害者視点に立つ物語がほとんどないってのはいかにもバランスが悪い。
いじめをおこなっていた当事者が次の日には被害者になりえる、その逆も。あの同調圧力の恐ろしさ体験したことないですか? 僕は中一くらいにまさにそのものって空気を体験したことありますが、アレは本当に気持ち悪かったし恐ろしかった。*1
娯楽作品として考えるとやっぱ暴挙だったんじゃないかなあ、と今でも思わなくもありません。最初から最後までめちゃくちゃしんどかったし。
でも、些細なディスコミニケーションからみるみるうちに地獄が広がり責任逃れしようがないくらいの当事者に主人公がなってしまう様を克明に描いて見せたこの作品の挑戦を、僕は評価したいとも思うんです。
原作読もう
あの原作をよく二時間にまとめたと思うし、映像と音声があるからこそって表現も多いので明確に映画版が劣っているってわけではないのですが、さすがに尺の問題か描写しきれてない部分はちょこちょこあります。
友達連中それぞれの内面とか、映画だけだとかなりの部分を想像で補わないといけない。一番闇深いんじゃないかこいつって子が映画版だと唯一背負ってる背景の無いキャラに見えちゃったりね。
特に、ヒロインの西宮さんが「聖人」扱いされる余地が残っちゃってるのはわりと痛恨というか致命傷に近い気が。普通は絶対怒るはずの場面で「ごめんなさい」と言う。ステロタイプな「聖人」を演じることで他人と正面からぶつかるコミュニケーションを拒否していたってとこが彼女の一番のポイントだと思うのだけど……映画版の内容だけでそこ読み取るのかなり至難なのよね。
本来絶対にこの手の議論が巻き起こりそうな物語なのに原作連載中にはあまり見かけなかったってな話も聞きましたが、それは連載だと嫌がる人や怒る人は序盤で読まなくなっちゃうからじゃないかな。劇場アニメだと入場した以上は普通最後まで見ちゃいますから。
というか、連載時は僕もだいたい2巻分弱くらいで挫折しましたよ。単行本でまとめて読むならともかく、こんなエゲつない話完結の保証もないのに連載で読み続けるとかソレ拷問じゃないですかね……。
そういう意味でも、改めて原作を読み直すきっかけをくれた映画には感謝したいと思っています。
そのままでは読むのが辛い原作に強制的に引きずり込む力を持った映画版。『聲の形』とは二つセットで完成する作品なのかもしれませんね。
- 作者: 大今良時
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/01/17
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*1:その後転校した学校はくっそガラの悪い「力が全て」みたいなとこでしたが、同じしんどいならこっちのほうがまだぜんぜん楽だわ、とすら思った。
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