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「千羽鶴、何とか生かせないか」名刺や封筒にリサイクル、コスト大が課題に 長崎原爆資料館

西日本新聞 9月4日(日)9時10分配信

 長崎原爆資料館(長崎市平野町)にささげられた千羽鶴(折り鶴)の一部が、名刺台紙やカレンダー、封筒などにリサイクルされている。オバマ米大統領が5月に広島市を訪問した際に贈った折り鶴が、9月3日から長崎で展示されることが決まるなど、折り鶴は平和祈念の象徴でもある。だが、リサイクルには多額のコストがかかるという。長崎市が事業として継続していくのは難しいようだ。

【画像】長崎原爆資料館の折り鶴がリサイクルされた封筒やカレンダー

「折り鶴を何とか生かせないか」

 市平和推進課によると、原爆資料館には国内外から折り鶴が寄贈され、例年、総重量は500キロ前後に及ぶという。館内で一定期間展示した後は、市が古紙回収に出したり廃棄処分したりしていたが、2012年9月の市議会一般質問で「平和への願いが詰まった折り鶴を何とか生かせないか」と活用方法が議論されたこともあるという。

 再生紙化の取り組みに手を挙げたのは、井上勲紙店(長崎市栄町)。和紙の産地として知られる福岡県八女市にある中村製紙所の協力を取り付け、800キロほどの折り鶴を使って加工、試作品を製作することになった。金や銀の折り鶴は再生紙として使えないため取り除き、束ねているひもも引き抜く必要があった。

 試行錯誤を重ねる中で、再生紙のうち、折り鶴の配合率は約15%が限度だと分かった。13年秋に和紙の試作品が完成。井上勲紙店の井上順平会長は「折り紙の赤色や緑色がちりばめられた、おしゃれな紙ができた」と胸を張る。縦110センチ、横87センチの再生紙を4千枚製造。厚さは2種類用意した。

コストがかかりすぎることが壁

 折り鶴再生紙は、市職員が使う名刺台紙や、被爆70年となった2015年のカレンダー(壁掛け、卓上)、一筆箋、封筒などに生まれ変わった。今月9日の平和祈念式典では、折り鶴再生紙に書かれた平和宣言を田上富久市長が読み上げたという。

 ただ、再生紙が製造されたのは1度だけという。「折り鶴リサイクル」を事業として継続するには市場が小さく、コストがかかりすぎることが壁となった。

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最終更新:9月4日(日)15時27分

西日本新聞

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