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中央アジア、不安定化の懸念 ウズベク大統領死亡

2016/9/3 20:38 (2016/9/3 23:39更新)
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 【モスクワ=古川英治】四半世紀にわたり独裁体制を敷いた中央アジア・ウズベキスタンのカリモフ大統領が死亡し、後継体制に不透明感が漂っている。長期独裁が続く構図は周辺各国に共通する。資源安などにより各国の景気は悪化し、頻発する反政府デモやテロを抑え込むため強権に拍車がかかっている。ウズベクの政権移行に伴い、中央アジアの不安定な情勢に懸念が高まりそうだ。

 カリモフ氏の葬儀は3日、同氏の故郷であるサマルカンドで行われた。旧ソ連時代から絶対的な権力を誇示したカリモフ氏の後継体制は不透明なままだ。葬儀委員長を務めたミルジヨエフ首相らが後継候補と見られているが、側近や親族などの権力闘争が激化する可能性がある。

 周辺の中央アジア各国の体制も同じ構図にある。カザフスタンでは、旧ソ連時代から権力の座に君臨するナザルバエフ大統領(76)の後継体制が見えない。タジキスタンのラフモン大統領(63)は今年、「終身大統領」を視野に、自身に限って当選回数を制限しない憲法改正を強行した。

 各国の政権は反対派を弾圧し、独裁的な地位を固めたが、景気悪化で不安定さが増している。石油・天然ガス輸出に依存するカザフやトルクメニスタンは原油安の直撃を受け、通貨が急落し、インフレが国民生活を追い詰めている。

 カザフなどでは反政府デモが頻発。5月には首都アスタナや最大都市アルマトイなど各地でデモが広がり、治安部隊を投入して抑え込んだ。7月にはアルマトイで治安機関を狙ったテロが起き、当局はイスラム過激派の犯行と断定した。

 中国とロシアの間に位置する中央アジアはアフガニスタンに隣接し、対テロの要衝でもある。米国はアフガンでの戦争の際にウズベクとキルギスに軍事基地を置いた経緯があり、各国の強権への批判を抑えてきた。最近はアフガンなどから中央アジアに過激派が流入する懸念も指摘される。

 ロシアはウズベクの体制移行を勢力拡大の好機と捉えている。カリモフ氏はロシアとは一定の距離を置く独自外交を展開していた。新シルクロード構想「一帯一路」を掲げる中国の影響力が強まる中、ロシアは対テロをてこに中央アジアで軍事増強に動く。中国は同地域が不安定化し、イスラム教徒が多い新疆ウイグル自治区に悪影響が及ぶことを懸念しており、ロシアの軍事面での役割を許容するとの見方がある。

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