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 初のアフリカ開催となった、第6回アフリカ開発会議(TICAD6)。安倍晋三首相は「質の高い」アフリカを目指すと演説。豊富な資金力で先行する中国との違いを強調した。日本の存在感を高める狙いだが、進出を狙う企業には、テロや内戦といった治安リスクが最大の懸案となっている。

 安倍首相はTICADの開幕を告げる27日の基調演説で、アフリカに寄り添う姿勢を強調した。まず訴えたのは、アフリカからの国連安全保障理事会の常任理事国入りだった。

 「国連安保理改革こそは、日本とアフリカの共通の目標だ。達成に向け共に歩むことを、皆様に呼びかけます」。日本も目指す常任理事国入りについて、首相がそう力を込めると、会場から拍手が湧いた。

 首相は、経済協力に話題を移し「日本企業には質への献身がある。アフリカで力をいかす時が来た」と主張。「日アフリカ官民経済フォーラム」の立ち上げや、総額3兆円(300億ドル)規模の官民による投資など、具体的な協力・支援策を並べた。

 人材育成やトヨタ式の「カイゼン」で「質の高いアフリカ」をつくるとも説明。アフリカでの影響力を強める中国に対し、「オールジャパンで量より質で勝負する」(外務省幹部)姿勢を打ち出した。

 約20分間の演説の最後には、「世界に安定、繁栄を与えるのは、自由で開かれた二つの大洋、二つの大陸の結合が生む、偉大な躍動にほかならない」と切り出し、安倍外交の新戦略「自由で開かれたインド太平洋戦略」を披露した。

 新戦略は、成長著しいアジアの成功を「海の道」を通じてアフリカに広げ、潜在力を引き出すという構想だ。南シナ海や東シナ海で権益の拡大を図る中国の強硬姿勢との対比を念頭に、太平洋とインド洋を「力や威圧と無縁で、自由と法の支配、市場経済を重んじる場として育て、豊かにする責任を担う」と決意を語った。

 新たな戦略をテコにして、アフリカでの存在感を高めたい安倍政権。ただ、中国は昨年12月、習近平(シーチンピン)国家主席が南アフリカで開かれた中国・アフリカ協力フォーラムで、協力実施のために600億ドル(約6兆円)の支援を約束するなど、政府が豊富な資金力を持つ企業と一体となってインフラ開発を進める。

 外務省幹部は「支援額の数字だけで比較されるのは、納得がいかない。アフリカは可能性を秘めた地域。今後さらに力を入れたい」と話すが、日本の新戦略がどこまで浸透するかは見通せない。(ナイロビ=岩尾真宏)

■最後の巨大市場 治安が障壁

 「継続的な成長には治安の安定…

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