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2005-01-27 実写映画版『キューティーハニー』庵野秀明監督作品

アメリカの最低映画を決めるラジー賞のノミネーションが先日発表されたが、同賞の日本版とも言える文春主催の「きいちご賞」(週刊文春1月27日号にて掲載)も発表された。本賞は映画記者、評論家、20人の投票により決定されるらしい。
その「きいちご賞」で圧倒的な支持のもとワースト1位に輝いた作品は、伊崎央登主演の『デビルマン』。受賞理由は「出演者があまりにもダイコン」と言う厳しいコメントが寄せられた。
2位は宇多田ヒカルの夫の紀里谷和明が監督したことで話題となった『CASSHERN』。この作品に対しては「宇多田ヒカルが歌う曲のプロモーション映画」とバッサリ。
世界の宮崎アニメ最新作として記録的な大ヒットとなり、興行的にも成功している『ハウルの動く城』ですら「声優もストーリーも絵もすべてダメ」と、怖いものなしの批判が続く。
制作者側からすれば聞くに堪えない批評ばかりだが、ここまでズバリ辛口意見が掲載されると読者には新鮮な印象を与える。常に社会の問題点、矛盾点を見逃さない姿勢の週刊文春ならではの企画だ。(FLiXより)
というわけで、本日は実写映画版『キューティーハニー』について書いてみる。
■あらすじ『如月ハニーの正体はアンドロイドだ。戦う意味を知らず、愛する感情を持たなかった彼女の前に突如現れた謎の秘密結社パンサークロー。そして戦いの中で出会った友人、秋夏子と早見青児。揺ぎ無い友情を知った今、愛の戦士が目を覚ます!』
実写映画版『キューティーハニー』は、2004年に狂ったように公開された「アニメの実写化映画」の中の一本である。キャシャーン、忍者ハットリくん、デビルマンという中においては、実は先陣を切って公開されたキャシャーンが一番マシだったと個人的には思っている。
というよりデビルマンのインパクトが強すぎて他の映画はあまり覚えていないだけなんだけど。キューティーハニーも残念ながら映画の完成度は非常に低いと言わざるを得ない(もちろんデビルマンよりは遥かにマシなのだが、デビルマンと比較する事自体が既に間違っているのだ)。
一言で言えば「全体的にサブい映画」である。シリアスなキャシャーンとは対照的に、キューティーハニーはひたすらノー天気なテンションで突っ走る。しかし至る所で挿入されるギャグがことごとくすべっているのだ。
佐藤江梨子が風呂に入っているオープニングから既にサブサブ・パワー全開であり、この時点で客の大半は引いてしまうと思われる。しかしこの後も追撃の手を緩める事無く、ロシアの永久凍土並みのサブサブ・エピソードが炸裂するのだ!
もともとこの映画の企画は居酒屋での与太話から始まったらしい。「さくや妖怪伝」の打ち上げの席で樋口真嗣が酔っ払って「次はキューティーハニーやりましょう!」と言ったのがきっかけだったそうだ。
ところが樋口がトイレへ行っている間にたまたま同席していた庵野秀明が監督をすることに決まってしまったのである。トイレから戻った樋口はそんな短時間で企画をさらわれてしまった事に愕然としたらしい。このように立ち上がりの経緯からして相当いいかげんな映画だという事が良く分かる。
また、この映画の見所の一つは「ハニメーション」と名づけられた独特の表現方法で、アニメーターが描いた原画に合わせてハニー(佐藤江梨子)を1コマずつ撮影し、それに爆発などのデジタル合成処理を加え、それらを繋げて動画にしたものなのだ。
要するに「人間パラパラマンガ」というわけだが、この原画を描いたのが「フリクリ」や「アベノ橋魔法商店街」などのガイナックス作品で腕を振るってきたアニメーター:今石洋之である。つまり完全にアニメの方法論を実写に持ち込んでいるのだ。
しかし今石の描く原画はキャラに変なパースがついていたり、動きが異常に誇張されたり、伝説的アニメーター:金田伊功を髣髴とさせるような極めて特殊なアニメーションなのである。
したがって「この動きを人間が再現できるのか?」ということが最大の問題点だったらしい。現場ではアクション監督のシンシア・ラスター(80年代の香港映画で活躍したアクション女優)が指導していたものの、“人体構造的に明らかに無理があるポーズ”に対して佐藤江梨子が「そんなの出来ません!」と猛烈に抗議したらしい。
それに対して現場のアニメーターからは、「出来るよ!絵に描けるんだから!!」と逆に激しく言い返されたそうだ。監督の庵野秀明も元アニメーターであり、本作はまさに「アニメーター主導」で作られた初の実写映画と言えるだろう。ちなみに本作は上記の「きいちご賞」の第8位にしっかりランキングされていたんだけど、もっと上かと思ってたよ(^_^;)
出演:佐藤江梨子、市川実日子、村上淳、及川光博、片桐はいり、小日向しえ、松田龍平、京本政樹、吉田日出子
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