僕はバッターボックスに立った。
スタンドからは罵声混じりの声援が聞こえる。
「やれやれ。悪くない。」
時は20XX年。夏の甲子園。
僕達、春日部トレンディ―高校は
決勝戦まで駒を進めた。
僕が野球を始めたのは10歳の時。
野球人生としては始めるのが遅かったかもしれない。
だけれども、メジャーリーグでイ〇ローが3000本安打を
達成した時の高揚感が忘れられなかった。
物心がついた時に与えられた遊び道具は
プラスティック・バッドだった。
父は僕によくいったものだ。
「お前のスイングには人を幸せにする力がある。
一生、素振りをし続けなさい。」
その言葉を信じて一日1000回の素振りを
欠かした事は無い。
雨の日も風の日もだ。
そして、僕は今この舞台に
立っている。
ピッチャーが振りかぶって球を投げてきた。
しなるような腕使い。
長身のその投手は東京都代表の
高校球界の宝と呼ばれるササニシキ・コジロウ。
僕の最大のライバルだ。
時速155kmの速球がキャッチャーミットに
吸い込まれていく。
「ストライク!」
審判の声が聞こえる。
だが、負けるわけにはいけない。
今日この日この瞬間の為に僕は
毎日1000回の素振りをこなしてきたのだから。
僕は予告ホームランのポーズをした。
世間は20XX年の夏。
僕達の夏がもうすぐ終わろうとしている。
終わらせたくない、この想い。
ネバー・エンディング・サマー。
どうか、終わらないで欲しい。
ネバー・エンディング・サマー。
どうか、終わらないで欲しい。
(サビ繰り返し)
~完~