News Up 今どきは何でもラップで表現8月16日 17時30分

自分のメッセージを歌詞に込めて、時に韻を踏みながら歌うのがラップの基本ですが、相手と１対１で、即興の歌詞などの技術を競う「ＭＣバトル」というスタイルが、今、人気を集めています。
全国各地で「ＭＣバトル」のイベントが開かれていますが、特に参加者の多彩さで注目されているのが社会人ラップ選手権です。
ラップの歌い手＝ラッパーやイベント会社などの主催でことし４月に開かれた第１回の予選には７０人余りが参加しました。
職業は、公務員や歯科医師、プラグラマーやフリーターなどさまざまです。社会人らしくバトルは「名刺交換」から始まり、自身の仕事に対する誇りや怒り、取引先や家庭での不満、時には相手への罵倒なども歌詞に込めて、ラップの技術を競います。
第２回目の開催も決まり、予選を経て９月に本選が東京の新木場で開催される予定です。

秋田県湯沢市では、ことし７月、地元で行われた音楽イベントのＰＲで、市長と副市長がみずからラップを披露しました。
「Ｓｔａｎｄ ｂｙ ｍｅ 湯沢市／おめだちみんなで来てたんし」「湯沢のアイドル／小野小町と踊ろうＹＯ！」などと軽快に歌うインターネットの動画が、意外性もあって話題になりました。
ほかにも、茨城や熊本、鳥取など全国で地元をＰＲする「ご当地ラップ」が生まれているほか、自動車やチョコレート菓子、炭酸飲料や即席麺などさまざまな企業のＣＭにラップが使われるケースが増えています。
また、社会的な運動でも、若い世代が参加した去年の安全保障関連法に反対する集会では、メッセージの呼びかけが、シュプレヒコールだけでなく、ラップのスタイルでも行われました。

世代を超えた広がりも出ています。
「ＴＡＴＳＵＫＯ★８８」さんは８０代の女性ラッパー。東日本大震災の被災地でのアーティストとの交流から、ラップの作品が生まれました。
「あれ考えればなんでもない／どんなことだって乗り越えていける／なにくそって思えばなんとかなる／どんなことだって乗り越えていける」
戦争や東日本大震災などを経験した人生を表現したラップが動画投稿サイトで広がり、話題になりました。

社会人ラップ選手権実行委員会のメンバーで、ラッパーのマチーデフさんは「これまでは『なんだか怖い』『亜流の音楽』といったイメージから、みずから歌うことに抵抗を感じる人が少なくなかったのですが、若いころからラップに触れて育った世代が社会人になり、イベントを開いたり、企業などのＰＲを手がけるようになったことが、広がりの背景にあるのでは。もともと日本人は、俳句の五七五など、一定のリズムに乗せて語るという、いわばラップのスタイルになじみがあったと思います」と指摘します。
マチーデフさんは、現在、子どもからお年寄りまで幅広い世代を対象に、ラップのワークショップを東京で開いています。
「もともとラップは楽器などがいらず、誰でも手軽にできる音楽でした。『これなら自分でもできる』と思える敷居の低さが重要で、山登りをして山頂で俳句を詠むくらいの気軽さで、多くの人がラップで思いを表現できるようになれば」と話していました。